Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
教育セミナー 乳腺 知っておきたい乳腺良性疾患

(S341)

知っておきたい乳腺良性疾患

Breast Benign Disease: Correlation of the Pathological-Ultrasound Imaging

角田 博子, 堀井 理絵

Hiroko TSUNODA, Rie HORII

1聖路加国際病院放射線科, 2がん研究会有明病院病理部

1Dept of Raiology, St Luke's International Hospital, 2Dept of Pathology, Cancer Institute Hospital

キーワード :

日常診療でしばしば遭遇する乳腺良性腫瘤は,乳管内乳頭腫,線維腺腫,葉状腫瘍の3つである.本セミナーでは,この3つの疾患についてUS画像および病理像の特徴を学ぶ.
乳管内乳頭腫は,乳管内に発生する乳頭状腫瘍のなかで最も頻度が高い良性上皮性腫瘍である.血管を伴う比較的広い間質を茎に,異型の乏しい乳管上皮細胞と筋上皮細胞が2層をなして配列する.乳管上皮細胞が形成した腺腔内,あるいは,硝子化した間質内に石灰化がみられることがある.US像では,典型的には管状あるいは嚢胞状に拡張した内腔に乳頭状増殖する充実性病変として認識される.充実性腫瘤として描出される場合にはリアルタイムで無エコー部分の有無をチェックすることが重要である.また,非腫瘤性病変として認識されることもある.hypervascularで歪みの低下の強い症例もあり,カラードプラやエラストグラフィの偽陽性に注意したい.
線維腺腫は,結合織(線維)および上皮(腺)の共同増殖による良性腫瘍である.圧排性に発育する腫瘤を形成し,周囲組織との境界は明瞭である.組織学的には,上皮成分の形態によって,管内型,管周囲型,類臓器型,乳腺症型の4つに亜分類される.しかし,多くの線維腺腫では,これらの亜型が混在して認められる.結合織成分も,粘液浮腫状,硝子化,石灰化を伴うなどさまざまな変化をきたし,これがUS画像に反映される.日常では非典型例にも遭遇するが,典型例では線維腺腫であり,それ以上の精査が不要であることを断定することが重要である.
葉状腫瘍は,結合織および上皮性混合腫瘍の一種で,線維腺腫より結合織成分の増生が強いものである.通常,圧排性に発育する腫瘤を形成し,周囲組織との境界は明瞭である.しかし,一部で結合織成分が周囲組織に浸潤性に増殖することがある.葉状腫瘍は,結合織成分の細胞異型,細胞密度,核分裂像の数により,良性,境界,悪性に分類される.葉状腫瘍の中での悪性の割合は小さい.上皮成分はしばしば引き伸ばされ,スリット状に拡張し,葉状構造を呈する.葉状構造は,良性,境界,悪性の順に多くみられる.線維腺腫と葉状腫瘍をUS上鑑別するのは難しいが,スリット状構造が確認できればUS上も葉状腫瘍を強く考慮することが可能である.急速増大するなどの臨床所見やvascularityも参考となる.