Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
ワークショップ 乳腺 教育委員会 極めるシリーズ「Her2陽性乳癌」

(S339)

HER2陽性乳癌の超音波画像の検討-形態分類と化学療法効果

Trend of HER2 positive breast cancer US Images: morphologic and chemostherapy effect

櫻井 早也佳, 中島 一毅, 水藤 晶子

Sayaka SAKURAI, Kazutaka NAKASHIMA, Akiko MIZUTOU

川崎医科大学総合医療センター総合外科学

Department of general surgery, Kawasaki Medical School Genaral Medical Center

キーワード :

【はじめに】
HER2陽性乳癌は乳癌全体の約2割を占め,以前は最も予後不良なサブタイプとされてきた.その後,分子標的薬の臨床応用と共に,化学療法薬に対する感受性が高いことが判明し,現在は術前薬物療法の適応になる症例が多くなっている.乳がん全体の超音波画像や治療効果を報告したテキスト,論文は多く存在するが,サブタイプ,とくにHER2タイプに限定して超音波画像・治療効果による変化などを報告した論文はなく,超音波診断学を勉強しているものからは強い関心が寄せられている.
そこで,今回,JABTS臨床研究班で収集されたHER2タイプ乳癌画像の一部を閲覧させて頂き,HER2陽性乳癌の超音波画像,化学療法治療の変化を後方視的に検討させていただいたので紹介する.
【対象】
JABTS臨床研究:多施設研究JABTS BC-03「超音波検査による乳がん術前化学療法早期判定基準の有効性に関する研究」(UMIN000003478)で登録された画像中,HER2陽性乳癌症例96例(pureHER2 type 48例,Luminal-HER2 type 48例)の超音波画像.
【方法】
HER2陽性乳癌の術前化学療法前の超音波画像を腫瘍形態から,大きく3型に形態分類することとし,圧排・膨張発育を主体としたExpansive Growth型(EG型),乳管内進展を主体としたIntra-ductal Spread型(IS型),浸潤性発育を主体としたInvasive Growth型(IG型)と定義し,その比率,組織学的治療効果判定と関連を検討した.
【結果】
組織学的治療効果はGrade3 34例,Grade2 32例,Grade1 28例,不明 2例であった.治療前の腫瘍径の平均値は32mm(中央値9mm)であった.組織学的治療効果で検討すると,Grade1群では32mm,Grade2群では33mm,Grade3群では30mmで,腫瘍径での化学療法効果には有意差は見られなかった.腫瘍形態別ではEG型:40例(pureHER2type20例,L-H type20例),IS型:30例(pureHER2 type18例,L-H type12例),IG型26例(pureHER2 type10例,L-H type16例)で,ややEG型が多い傾向にあった.形態分類別のpCR率はEG型:38%,IS型:36%,IG型:23%であった(p=0.55).
pureHER2typeとLuminal-Her2 type別に分けてpCR率を検討すると,HER2typeではEG型:45%,IS型:55.6%,IG型:40%であった(p=0.68).L-H typeではEG型:30%,IS型:16.7%,IG型:23%であった(p=0.60).
【結語】
HER2陽性乳癌全体でEG型,乳管型,浸潤型での化学療法効果には差がなかったが,pureHER2 typeではIS型が多い傾向が見られた.