Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
ワークショップ 乳腺 教育委員会 極めるシリーズ「Her2陽性乳癌」

(S338)

Her2陽性乳癌の超音波像の検討

Ultrasonographic findings of Her2 positive breast cancer

髙木 理恵, 持冨 ゆかり, 前田 ゆかり, 大井 恭代, 佐々木 道郎, 雷 哲昭, 相良 吉昭

Rie TAKAKI, Yukari MOCHITOMI, Yukari MAEDA, Yasuyo OHI, Michirou SASAKI, Yoshiaki RAI, Yoshiaki SAGARA

1社会医療法人博愛会相良病院生理機能検査室, 2社会医療法人博愛会相良病院病理診断科, 3社会医療法人博愛会パース通りクリニック放射線診断科, 4社会医療法人博愛会相良病院乳腺科, 5社会医療法人博愛会相良病院放射線診断科

1Phisiological laboratory, Sagara Hospital, 2Department of Pathology, Sagara Hospital, 3Department of Radiology, Sagara Perth Avenue Clinic, 4Department of Breast Surgery, Sagara Hospital, 5Department of Radiology, Sagara Hospital

キーワード :

【はじめに】
以前Her2陽性乳癌は予後不良であったが,トラスツズマブ等による治療が一般化したことで治療効果や予後の改善が得られている.今回我々は,その中でも特にER陰性Her2陽性の乳癌の超音波所見について,何か特徴的な所見がないか検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は2014年11月から2016年10月までの2年間に,当院にて手術を行った乳癌1285例のうち,ER陰性Her2陽性だった79例.そのうち乳癌の既往があるもの,当院初診時には薬物療法中だったもの,潰瘍形成の為US施行困難だったもの,Paget病を除いた68例について,超音波所見を後ろ向きに検討した.分類が混在しているものは優位な方に分類した.
【結果】
年齢中央値は56歳(28-92歳).超音波では68例すべてで病変が認められており,マンモグラフィで描出されたものは65例(96%)だった.超音波所見毎に病変を分類すると,充実性腫瘤52例(76%),低エコー域16例(24%)で,エコーレベルはすべてが低であり,点状高エコーが認められたものが31例(46%),なかったものが37例(54%)で,後方エコーが増強するものが35例(51%),不変が25例(37%),減弱が8例(12%)であった.充実性腫瘤の形状は,不整が25例(48%),多角が16例(31%),分葉が11例(21%).乳房超音波ガイドラインの検診フローチャートに当てはめると,カテゴリー2の分類に入る症例はなかった.また病変を2008年のBreast cancer誌の角田らの報告を参考に,乳管に沿って増殖するものをA1,圧排性に増殖するものをA2,周囲組織を引き込むように増殖するものをA3として分類すると,A1は29例(43%),A2は38例(56%), A3は1例(1%)だった.
【考察】
ER陰性Her2陽性乳癌は低エコー腫瘤が最も多く,点状高エコーの有無には大きな差がなかった.後方エコーは減弱するものは少なく,増殖形式毎の分類でも,A3はほとんど認められず,A1もしくはA2の分類がほとんどであり,ER陰性Her2陽性乳癌は硬癌のように線維増生を来すような病変は少ないのではないかと考えられた.
【結語】
ER陰性Her2陽性乳癌は乳管に沿って増殖するものか,圧排性に増殖するもののいずれかに分類されるものがほとんどであり,硬癌様の画像所見を示すものにER陰性Her2陽性乳癌は少ないのではないかと考えられた.