Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
ワークショップ 乳腺 教育委員会 極めるシリーズ「Her2陽性乳癌」

(S338)

HER2陽性乳癌に特徴的なマンモグラフィとMRI所見について

HER2-positve breast cancer: mammography and MRI findings

中島 一彰, 植松 孝悦, 杉野 隆

Kazuaki NAKASHIMA, Takayoshi UEMATSU, Takashi SUGINO

1静岡がんセンター生理検査科・乳腺画像診断科, 2静岡がんセンター病理診断科

1Breast Imaging and Breast Intervention Section, Shizuoka Cancer Center Hospital, 2Department of Pathology, Shizuoka Cancer Center Hospital

キーワード :

乳癌のサブタイプは細胞・遺伝子レベルの分類であり,従来の病理形態的な画像所見と一致しない.しかしながら,サブタイプとその組織構築に関連する画像所見が存在する.乳癌の治療方針を決めるうえでサブタイプが病理組織型の違いよりも重視される現状において,サブタイプとその画像所見の特徴を理解することは重要である.特にHER2陽性乳癌は,aggressiveな性質であるものの抗HER2療法という有効な治療薬があるため,その画像所見の特徴を知っておくことは,治療方針の決定および病理診断の裏付け等に役立つと考えられる.
マンモグラフィにおける(non-luminal)HER2陽性乳癌の特徴として,石灰化を伴う症例が多い(腫瘤の有無に関わらず)ことが挙げられる.その理由は,HER2陽性乳癌は乳管内成分を伴う場合が多いためと考えられている.石灰化が存在する場合は,微細線状,分枝状の形態であることが多い.高濃度乳房の割合が高いとする報告もあり,高濃度乳房では石灰化でしか見つからない乳癌の割合が増すことがその理由かもしれない.MRIではnon-mass enhancementやmulticentric/multifocal lesionsとして認める場合が他のサブタイプより多く,massを呈する場合は,辺縁がirregular, spiculated(not-circumscribed margin)であることが多い.一方,luminal-HER2(luminal B-like)乳癌の画像所見に関する報告は少ないが,luminal A-likeと(non-luminal)HER2陽性乳癌の両者の特徴を有しうると考えられ,しばしばスピキュラを伴う腫瘤像を呈し,また,multicentric/multifocal lesionsの頻度はluminal A-likeやtriple negative乳癌より高いとされる.本ワークショップではHER2陽性乳癌に特徴的なマンモグラフィとMRI所見について,自験例を提示して解説する.また,術前化学療法の画像評価においてもサブタイプを考慮する必要があり,これについても言及する.