Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
パネルディスカッション 乳腺2 特別企画 女性のライフサイクルと乳がん~啓発活動はどうあるべきか~

(S334)

イントロダクション

Introduction

田中 久美子

Kumiko TANAKA

湘南鎌倉総合病院乳腺外科

Breast Surgery, Shonan Kamakura General Hospital

キーワード :

ライフサイクルとは,人生の経過を円環に描いて説明したものである.
女性のライフサイクルは小児~幼児期,思春期,性成熟期(18~45才頃),更年期(45~55才頃),老年期と分類される.妊娠・出産・育児は性成熟期と呼ばれる年代で主に行われる.
女性のライフサイクルと乳がんの関係を考えてみたい.小児・幼児期は,近親者が罹患しているなどの状況以外は,あまり意識されることはないであろう.思春期も状況としてはあまり変わらないが,通常学校に通う年代なので,教育を受ける機会は多いといえる.性成熟期は重要で,10代後半で社会に出る人もいる.後半からは乳がんも増えてくる.この時期の早い段階で,乳房の管理や検診,乳癌の治療と妊孕性の関係などを知っておくことは大事だと考えるが,性成熟期には女性の在り方は多種多様である.どこで,どのような情報が提供されればいいのだろうか.学習の機会は,いくつか,何度もあるとよい.学校で扱うのもひとつであるし,適切な情報が得られるならばもちろんマスメディアやネットは手軽な媒体である.性成熟期が過ぎると,乳がん患者が増加する更年期や老年期を迎える.女性ホルモンが急激に減って心身の変化を来したり,肥満や生活習慣病が起こりやすくなるこの年代で,検診や治療の選択に適切な行動が取れるようにするには,どのような情報提供が望ましいのか.医療講演,市民講座なども行われてはいるが,忙しい日常の中で時間を取って会場に足を運ぶ人は,おそらくそれほど多くはない.
乳癌の臨床に従事していて残念に思うのは,乳房のよくある症状や管理について知らない人がとても多いことや,あまり質が高いとはいえないメディアの情報や知人からの情報を受け取って不安が煽られている状況や,個人の自由とはいえ,受診の時機を逸して進行がんとなってから受診する人や,根拠に乏しい自由診療の治療に走る人が後を絶たないことなどである.
日本においては性成熟期後半の世代から乳癌の罹患が増えること,治療の内容によっては妊孕性保持に苦慮することもあることは,若いうちに認識できると良いのではないか.また,好発年齢になる前に,乳癌は早期発見されれば治りやすく,治療に伴う心身のダメージはあるものの,治療後も治療前とさほど変わらない生活が可能なことを知ってほしいと思う.
本パネルディスカッションでは,乳がんの啓発活動に熱意ある先生方をお招きしてお話いただくが,会場の皆様も啓発の時期や方法について考えていただきたいと思っている.