Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
パネルディスカッション 乳腺1 超音波検査における特異度を上げるには

(S332)

造影超音波による超音波診断特異度改善の試み

Improving of ultrasound diagnostic specificity using contrast-enhanced ultrasound

位藤 俊一

Toshikazu ITO

地方独立行政法人りんくう総合医療センター外科

Surgery, Rinku General Medical Center

キーワード :

乳房腫瘤性病変に対する造影超音波は,第2相,3相臨床試験において超音波Bモード法や造影MRIに比較し正診率で有意に優れ1)2),2012年8月に保険適応となった.なお,ソナゾイドは,鶏卵由来の安定剤である水素添加卵黄ホスファチジルセリンナトリウムとペルフルブタンから成る径2-3μmの微小気泡(マイクロバブル)である.
【造影超音波の方法】
乳房腫瘤等の病変をBモードで観察し,カラードプラ法によりバスキュラリティを評価後,造影超音波モードで撮像する.関心領域の深度,範囲やBモード画像での病変の性状等により造影モードで使用する探触子や周波数を決定する.ソナゾイド造影では基本的に,1バイアルを添付の注射用水2mLで懸濁し,標準用量として体重1kgあたり0.015mLを静注後,10mLの生理食塩水でフラッシュし撮像する.探触子は造影超音波対応の体表用リニアプローブを用い,MI(Mechanical index)値は0.2前後に設定する.
【乳房造影超音波診断基準(案)】
第2相,第3相臨床試験で作成され使用された乳房造影超音波診断基準(案)が日本超音波医学会乳房造影超音波用語診断基準小委員会や日本乳腺甲状腺超音波医学会フローイメージング研究部会等でも検討され,妥当であるとのコンセンサスが得られている.診断基準は判定が比較的容易であることや簡便性が重要であるが,乳房腫瘤に対する造影超音波診断基準(案)は,極めて簡便に作成されている.すなわち,良性病変では病変全体が強くまたは弱く均一に染影(造影)されるか,または全く染まらない.一方,悪性病変では腫瘤全体が不均一な染影を示し,ときに腫瘤内部に部分的な不染域を伴う.
造影超音波で良性パターンを呈すればインターベンション手技を回避可能である.造影超音波は簡便かつ安全であり,超音波診断における特異度を向上させ得る診断モダリティと考えられる.すなわち超音波Bモード画像やマンモグラフィ等で良悪性の鑑別が困難な場合でも造影超音波を施行することにより比較的客観的に診断を確定できる.逆にBモード画像で良性と判定されても造影超音波で不均一な染影や不染域を伴うなどの悪性所見が得られれば,インターベンション手技の適応となる.
簡便かつ安全な造影超音波検査は,被験者だけでなく医療従事者にとっても恩恵は大きい.腎機能障害のある被験者やMRIやCTの造影剤アレルギーのある被験者にとっても造影超音波は安全に施行可能であり,安全に施行できる有用な診断モダリティである.
【文献】
1)Y Miyamoto, T Ito, E Takada, K Omoto el al. PhaseⅡclinical study of DD-723(perflubutane):dose-response study in patients with breast tumors. J Med Ultrsonics 39. 79-86: 2012.
2)Miyamoto Y, Ito T, Takada E, et al. Efficacy of SONAZOID(perflubutane)contrast-enhanced ultrasound in the differentiation of focal breast lesions: Phase 3 multicenter clinical trial. Am J Roentgenol. 2014 Apr;202(4):W400-7.