Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
パネルディスカッション 乳腺1 超音波検査における特異度を上げるには

(S332)

乳房超音波診断 特異度を上げるための工夫-Comprehensive Ultrasound-

Comprehensive Ultrasound for the tool to Improve the Specificity of Breast Ultrasound Examination.

中島 一毅, 櫻井 早也佳, 水藤 晶子

Kazutaka NAKASHIMA, Sayaka SAKURAI, Akiko MIZUTOU

川崎医科大学総合医療センター総合外科学

General Surgery, Kawasaki Medical School, General Medical Center

キーワード :

乳房超音波検査には,基本となるB modeの他,血流を簡易的に評価するDoppler Mode,硬さを評価できるElastography,造影剤を使い微細な血流も観察できるContrast-Enhanced Ultrasoundがあり,いずれも臨床で広く使われている.
B modeは超音波検査の基本であり,B modeで病変を検出できて初めて診断をすすめることができるので最も重要であるが,形態診断のみであるため特異度が高いとは言い難い.
さらに近年,B mode自体の性能が著しく向上し,この病変検出能力が大幅に向上している.その結果,本来は治療の必要が無い病変もより多く検出され,悪性病変が否定できない場合には生検などの侵襲の高い検査に回されることになる.また,B modeを含め,超音波検査の精度は本質的に,装置の性能よりも,検査者の技術に強く依存する.その為,装置の性能を知り,性能を引き出す検査技術を持つことが何よりも重要である.
この性能を引き出す技術を考察したとき,B modeでは探触子にできるだけ,圧を加えず,極めて垂直に皮膚に当てながら,撮像するべきであることがわかっている.この状態は他のモード(Doppler Mode,Elastography,Contrast-Enhanced Ultrasound)のすべてに共通する技術であり,撮像法を強く意識することがすすめられる.言い換えれば,B modeをきちんと撮像できるものは他のモードも十分に性能を引き出していることになる.さらに,B mode,Doppler Mode,Elastographyは同じ探触子操作で,装置のスイッチを切り替えるだけで,瞬時に切り替えが可能であり,3モードを総合的に使いこなしながら,病変の検出,診断をすすめることが可能である.演者はこの3モードをリアルタイムに切り替えながら診断をすすめる手法をcomprehensive ultrasoundと命名し,論文報告している.
comprehensive ultrasoundは,先述の乳房超音波検査の特異度向上に関しても,有用である.特異度の向上には,癌確信度の向上と良性確信度の向上が考えられる.たとえば,Massを見つけた場合,B modeで診断できなければ,穿刺,生検することになるが,一回の超音波検査で数多くのMassが見つけられることも多く,この場合,ひとつひとつのMassに対して生検することになり,検査者の労力,患者の侵襲度は小さなものではない.やはり,癌の確信度が高いものを生検し,良性確信度の高いものは見過ごしたいと考える.
このような場合,comprehensive ultrasoundは,スイッチを切り替えながら,Elastography→Dopplerと検査を追加していけば,ひとつひとつの病変に対して行っても時間も労力も節約できる優れものである.
現在,comprehensive ultrasoundの有効利用法についてテキストを作成する予定であるが,今回,その一部の具体例を紹介し,comprehensive ultrasoundの有用性を供覧したい.