英文誌(2004-)
特別プログラム 乳腺(JABTS)
パネルディスカッション 乳腺1 超音波検査における特異度を上げるには
(S331)
検診のHarmを避けるための精度管理
Quality Control to avoid Harm of the Breast Cancer Screening
尾羽根 範員
Norikazu OBANE
住友病院診療技術部超音波技術科
Department of the Ultrasonic Examination, Sumitomo Hospital
キーワード :
精度管理とひとくちにいっても使用する装置の仕様や保守管理,検査法や検査手技と画像判読などさまざまな要素があり,また,同じ装置でもまったく異なる画質が実現できる現在,明確な基準を設けることはかなり困難な作業である.さらに,議論を重ねて妥当と考えられる基準を設けても,装置の急速な進歩によって基準が突然陳腐化してしまうことも十分にありうる.意見をまとめて書籍として発刊作業を行っている間に実情にそぐわない事例が出てくることも実際に起こっている.ただ,そのような状況下であっても最低限の担保を求めるのが基準というものなのであろう.
演者は精査施設に勤務しており,検診施設から精査目的の依頼で超音波検査を行うことが圧倒的に多い立場であるが,実際に紹介された症例のなかには,いったいどこに指摘の所見があるのか判断に苦しむこともしばしばである.おそらくその背景には,診断基準に収載されている用語に振り回されて要精査と判断したが実際は正常のバリエーションであったとか,走査が不適切であたかも病変があるようにみえたことによって要精査と判断してしまった,あるいはそのような画像を意識せずに記録してしまったことによって,判定医が要精査とすべき所見と判読してしまったというようなことがあるのだろう.いうまでもなく,精査施設でそのような先入観をもって検査を行うことは厳に戒めるべきであるが,指摘された所見が勘違いと思われる事象が推測できた場合はまだよしとしても,探しても一向に所見が見当たらない場合は結構なストレスではある.
そこで,そのような実例をもとに,検者がどのように検査し判断したかを推測し,その判断に至った背景にある教育や精度管理に関する問題点について述べたい.また,勘違いしやすそうな所見を見分けるちょっとした検査上のコツについても触れ,本企画のイントロダクションとしたいと考える.