Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 乳腺(JABTS)
シンポジウム 乳腺 乳房再建・豊胸術と超音波検査

(S329)

豊胸術後乳癌の超音波検査

Sonography for breast cancer detection after breast augmentation

松永 忠東

Tadaharu MATSUNAGA

ナグモクリニック東京乳腺科

Breast Service, Nagumo Clinic Tokyo

キーワード :

【背景】
豊胸術後は,一般的に乳癌検診は受けにくくなり,検診を遠慮しがちになる.当院においては豊胸術後の検診希望者は多く,乳癌も発見される機会が多くなって来た.
【目的】
豊胸術後の乳房に発生する乳癌は,病理組織そのものには特徴はないと考えられるが,検診と診断に際して,豊胸方法に準じた配慮が必要である.超音波検査を中心に乳癌診断上の留意点を検討した.
【対象と方法】
2010年10月から2016年12月までに,当院で診断から治療までを行った乳癌患者数は696人である.そのうち78人(両側2人,80乳房)が豊胸後の乳癌であった.80乳房の豊胸方法は,インプラント64件,脂肪注入2件,ヒアルロン酸注入10件,その他の注入異物4件であった.この80乳房の乳癌について,超音波所見から診断に至る過程について検討した.
【結果】
病理組織は非浸潤性乳管癌20件(Paget1件)で浸潤癌60件であった.超音波検査では,異常なし3件であり,この3件は微細石灰化像2件と血性乳頭異常分泌の症例であった.他のモダリティーと比較すると,マンモグラフィでは,異常なし32件,注入物で識別困難5件,微細石灰化像14件で,明らかに悪性と認識可能な陰影13件であり,圧倒的に超音波の病変描出力は優れていた.一方,触診は,異常なし24件,注入異物のための識別困難4件であった.
乳房造影MRIは37件で施行され,最終的には全てで病変は描出されていた.
手術方法への希望は,全例が同時再建を希望し,乳頭までを温存した皮下乳腺全摘・同時再建が61件,その他の乳腺全摘・同時再建が19件であり,術後病理組織の検討で7件に断端陽性があり,追加切除を施行した.
【考察】
豊胸術が施行された乳房は当然,原則として乳腺は薄く,皮下脂肪,乳腺後脂肪層も菲薄な場合が多い.超音波検査では,腫瘍病変の描出は優れているが,悪性を示唆する浸潤像が描出され難く,良性ないしは非浸潤癌と過小評価されることも少なからず認められた.早期診断及び確定診断のための針生検組織診は積極的に施行するべきである.手術に際しては,同時再建の希望が高いが,皮下脂肪,乳腺後脂肪層の菲薄さを十分に把握することで,皮下乳腺全摘・同時再建の術式選択に考慮が必要である.