英文誌(2004-)
特別プログラム 乳腺(JABTS)
シンポジウム 乳腺 乳房再建・豊胸術と超音波検査
(S328)
保険が効く乳房再建術と自費治療の豊胸術
Brest reconstruction and augment mammoplasty
三鍋 俊春
Toshiharu MINABE
埼玉医科大学総合医療センター形成外科・美容外科
Professor Plastic Surgery, Saitama Medical Center
キーワード :
乳腺摘出後の乳房再建術も,乳房を増大する豊胸術も,原則として形成外科医・美容外科医が行う.乳房再建術は片側性が多く,2013年から乳癌や乳腺悪性腫瘍摘出後に限って保険適応が認められた.一方,豊胸術は両側乳房の美容目的の自費手術となるところが最大の相違点である.
前者には,自分の腹部や背部に沈着する余剰脂肪を自家組織として活用する方法(以下皮弁術),とシリコンゲルをシリコン外殻で乳房型に封入した人工物(以下インプラント)による再建がある.インプラント挿入箇所は,乳腺組織が残存しないため厚く血流の豊富な大胸筋下(sub-pectoral)に限られる.後者は自費診療ゆえに様々な方法があるが,近年多いのがインプラント法である.豊胸術のインプラントは,乳腺組織が残存しているため乳腺下・大胸筋表層(sub-glandular)か大胸筋下層(sub-pectoral)となる.両者ともに適応にあたってはガイドラインが存在する(日本乳房オンコプラスティクサージャリー学会,日本形成外科学会など).
乳房再建・豊胸に関わらず術後合併症には気を付けるべきである.特に,生理食塩水を満たして乳房様に皮膚拡張を図るインプラントのエキスパンダーは金属板を内包するためMRI禁忌である.また,インプラントに合併する未分化型大細胞性リンパ腫(BIA-ALCL)も重大有害合併症として認識されてきた.乳房再建では皮弁術でもインプラントでも良好な形態が得られるようになった.ただし,インプラントの適応数は本邦年間6000例程度で,豊胸術の方が圧倒的に多い.今後は乳房再建がますます増加すると思われる.