英文誌(2004-)
特別プログラム 小児
ワークショップ 小児 縦長心エコー(成長とともに変わる小児心エコーの役割)
(S324)
乳幼児心エコー-川崎病
Echocardiography in infancy: Kawasaki disease
鎌田 政博
Masahiro KAMADA
広島市立広島市民病院循環器小児科
direc tor of the department of pediatric cardiology, hiroshima city hiroshima citizen's hospital
キーワード :
【はじめに】
今や川崎病の年間発症率は10,000人を超え,先天性心疾患の年間発症率に匹敵する.川崎病の合併症としては冠動脈瘤がよく知られているが,心筋炎,心膜炎,弁炎,不整脈などの合併にも留意する.川崎病患者は1歳前後に多いため,細かい評価は入眠中に行う必要があり,トリクロリールシロップやエスクレ座薬を使用する.
【冠動脈瘤】
プローブはできるだけ周波数の高いものを使用し,左冠動脈は左側臥位で,右冠動脈は右側臥位で観察する.冠動脈病変は冠動脈近位部,特に分岐部にできやすい.遠位部に発生することも稀ではないが,近位部になく遠位部にのみ発生する症例はほとんどない.したがって,川崎病急性期には右冠動脈セグメント1~2,左冠動脈セグメント5~6,左回旋枝セグメント11を中心に,セグメント3,セグメント6/7境界部まで観察する.セグメント11・13境界域にも拡張病変は発生するが,左回旋枝を末梢まで描出することは難しい.これらの領域を長軸方向に描出するには,剣状突起下からのアプローチが有用である.
冠動脈の正常値については,優位性の問題があり,これまで入院時(5病日まで)に記録された冠動脈を正常像として捉えて,冠動脈拡張病変を論じることが多かった.最近,冠動脈の拡張評価にZスコア表示が用いられるようになり,初回検査時の冠動脈がすでに拡大している可能性が示唆されている.また,冠動脈瘤の予後は瘤の大きさに関連するが,冠動脈瘤破裂の報告例もあり,急性期には拡大速度にも留意する.
【心筋炎】
CRPが高い心筋炎を認めた場合,川崎病主要症状が揃っていなくても川崎病を念頭に置く.心筋が肥厚し拡張障害の形をとる場合もあり,左室駆出率ばかりにとらわれないようにする.
【心膜炎】
急性期に少量の心嚢液を認めることは稀でない.しかし,心タンポナーデからショック状態に陥った報告もあり,拡張能の評価を含めてその経過には十分留意する.
【弁炎】
川崎病合併症としての弁炎は急性期のみならず,数か月後に発症・増悪する場合がある.冠動脈後遺症がなくても定期検診は必要であり,経過観察時には必ずカラードップラを使用して弁逆流をチェックする.