Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 小児
シンポジウム 小児 小児救急における超音波検査をどう利用するか:有用性とピットフォール

(S321)

超音波と他の画像検査法との使い分け

US and other imaging modalities: advantages and pitfalls

河野 達夫

Tatsuo Kono(Department Of Radiology, Tokyo Metropolitan Children's Medical Center) KONO

東京都立小児総合医療センター放射線科

Department of Radiology, Tokyo Metropolitan Children's Medical Center

キーワード :

小児に対する画像診断法の中で,超音波検査は欠くことのできない役割を果たしている.簡便で安価で放射線被ばくがない「アクセスの良さ」のみでなく,その高い解像度とリアルタイム性から純粋に画像診断法としての「質の高さ」も優れている.他方,CTやMRなどの他の画像検査法と比較して,欠点も持ち合わせている.これら利点・欠点を熟知した上で,適切な画像診断法を選択する必要がある.
1,超音波よりもCTが有用な場合
超音波は骨や空気を透過しないため,骨が介在する骨・関節病変および頭蓋内病変,そして空気が介在する肺あるいは縦隔内病変には一般に不向きである.腹部でも,消化管ガスが多い場合には良好な画像を得ることができない.しかし小児では骨化が不十分であるため,中枢神経をはじめとして良好な画像が得られる場合も多い.反面,CTは骨や空気の存在には大きく影響されず,内部構造を明瞭に描出することができる.欠点は放射線被ばくを伴うこと,小児では鎮静が必要な場合があること,造影剤投与が必要な場合があることなどである.
2,超音波よりもMRが有用な場合
超音波は空間分解能に優れているが,MRは濃度分解能に優れている.そのため病変の検出や,血管など周囲との位置関係の把握には超音波が優れている.反面,病変の組織診断をはじめとする質的診断は,MRが遙かに優れている.撮像法を工夫することにより,形態診断ではたどり着かない最終診断を得ることも可能である.MRの欠点は検査時間が長いこと,そのため多くの場合で鎮静が必要なことである.
3,超音波よりも核医学が有用な場合
核医学検査は,他の検査とはその役割が大きく異なっている.他の画像診断法が形態診断が中心であるのに対して,核医学検査は機能診断が中心である.放射性同位元素を含む薬剤の体内動態を見ることにより,病変あるいは臓器の機能・代謝などを調べることができる.形態診断に追加する情報が血流や硬度などに限定される超音波に比して,機能の面から明確に診断が下せる場合がある.
これら画像検査法ごとの利点・欠点を把握し,最も適切な画像診断法を選択すべきであるとともに,非侵襲的である超音波が他の検査法の役割をどの程度置き換えることができるかを,試行錯誤する方向性も重要である.