Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 小児
シンポジウム 小児 小児救急における超音波検査をどう利用するか:有用性とピットフォール

(S321)

小児救急における腹部超音波検査

Point-of-Care Ultrasonography in Pediatric Abdominal Emergency Medicine

余田 篤

Atsushi YODEN

大阪医科大学小児科

Pediatrics, Osaka Medical College

キーワード :

【はじめに】
小児の腹部救急疾患においてエコーはまず,スクリーニングとして個々の疾患の診断と除外をすることが目的とされ,同時に尿量や腹水の有無などの多くの情報が得られる.
小児の腹部救急の現場で,腹水,尿量,腫瘤,炎症,腸蠕動などの有無が
簡単にエコーで鑑別でき,米国を中心にPoint-of-Care Ultrasonography(PCU)という概念が提唱され,今後,さらに救急現場でのUSの位置付けが重要となる.
小児の腹部救急疾患では,腸重積,急性虫垂炎,便秘,水腎症などが多く経験される.
【腹水】
消化管穿孔や腹腔内出血ではでは混濁した腹水が,低蛋白血症やVPシャントでは無エコーの腹水が観察される.混濁した腹水では,胃十二指腸潰瘍,虫垂炎,機械性腸閉塞による消化管穿孔が考慮され,free airの検索や,診断困難な例では腹部CTが追加検査される.無エコーの腹水ではネフローゼ症候群や腹部以外の原因疾患を考慮する.
【炎症】
種々の腹部の炎症があるが虫垂炎では虫垂は腫脹し,血流は亢進し,穿孔の有無や手術適応なども決定でき,しばしば虫垂結石が観察され,エコーが感度・特異度いずれも高い.熟練すれば内科治療と外科治療の選別が可能である.IgA血管炎では確定診断は困難であるが,十二指腸下行脚を中心に,しばしば肥厚した腸管が観察され,この壁肥厚はしばしばスキップして,複数部位で観察されやすい.また,IgA血管炎では同時に虫垂炎などを否定し,不必要な回復術を避けることが重要である.
【腫瘤】
小児では,腸重積,乳児肥厚性幽門狭窄症,重複腸管,先天性胆道拡張症などが容易に鑑別される.また,便秘の糞石も忘れてはならない.腫瘍性疾患も頻度は少ないが経験される.重症の便秘では大きな糞石が観察され,その周囲には5層の腸管壁が観察される.腸重積の診断は感度,特異度いずれもエコーが最適で,非観血的整復もエコーが最適で,重積部位のドプラを参考に内科,あるいは外科治療が選択される.乳児肥厚性幽門狭窄症の確定診断はエコーが最適で,原則としてX線による上部消化管造影は必要ない.また,幽門狭窄症で内科治療を選択した場合には,嘔吐症状だけでなく,超音波での経過観察が有用である.重複腸管では一般に無エコーの嚢胞性腫瘤として観察され,嚢胞壁は5層の消化管壁が観察される.この嚢胞性腫瘤で共通の壁構造が描出されれば確定診断となる.先天性胆道拡張症では嚢胞性腫瘤として観察され,エコーが確定診断に最適で,同時に胆管結石や蛋白栓なども観察され,ENBDや緊急手術の適応の有無も評価できる.年齢別胆管径の基準値を手元に置いておくと良い.胆道拡張症に合併しやすい膵・胆管合流異常のエコーでの鑑別は困難なことが多い.
【腸蠕動】
腸閉塞と腸炎との鑑別に有用である.腸閉塞では蠕動が低下し,腸管壁は肥厚し,進行すれば小腸襞は消失し,穿孔に至る.機械性腸閉塞では狭窄部の描出と狭窄前拡張の有無の観察が重要である.keyboard sign, to and fro signだけでなく,腹部単純写真では観察できない腸閉塞のfluid-fluid levelも腸閉塞の診断に重要である.一方,小児で多い感染性腸炎では一般に,腸管径は伸展気味で蠕動は更新し,腸管内には低エコーの残渣が観察されるが,上記の腸閉塞のsignは認めない.
【腎尿路】
無尿と尿閉が鑑別でき,同時に水腎症,水尿管や腎尿路結石が観察できる.水腎症は片側のことが多く,尿道結石を含めた尿管や尿道の通過障害をきたす疾患が考慮される.小児では膀胱尿管逆流症などもよく経験される.可能であれば腎実質のエコー輝度や両腎動脈血流も評価する.
以上の疾患を中心に,小児救急外来での腹部エコー診断と病態の評価について述べる.