Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 小児
シンポジウム 小児 小児救急における超音波検査をどう利用するか:有用性とピットフォール

(S320)

小児救急と心臓超音波検査-救急現場での心臓超音波検査-

Pediatric echocardiography in emergency unit

森 一博

Kazuhiro MORI

徳島県立中央病院小児科

Dept. of Pediatrics, Tokushima Prefectural Central Hospital

キーワード :

胎児エコーの普及により重症先天性心臓病は胎児期に診断され専門施設で出産,フォローされるようになった.そのため,以前のように複雑心奇形の児が「出生後に診断されてない状態で救急外来を受診すること」は激減した.
現在では,救急外来での心臓超音波検査は,先天性心臓病以外の疾患で,「超音波検査を聴診器と同じスタンスで利用」することになる.すなわち,心嚢液貯留,アンバランスな心腔などの所見から「急いで専門医に紹介すべき病態」をピックアップするのである.左室長軸断面,心室大血管短軸断面,四腔断面の3段面が重要であり,小児救急に関わる医師はこれらの断面に慣れて,画像が「どこか変」だと事に気づくことが大切となる.本シンポジウムでは以下の3つの病態について呈示したい.
【心筋炎】
小児心筋炎の1/4は早急に悪化する激症型であり,しばしば補助循環を要する.初発症状は非特異的で,消化器症状や喘鳴,全身倦怠のことが多い.脈拍は過度の頻脈から房室ブロックまで様々である.レントゲンで心拡大が明らかでない場合もあり,「如何に迅速に心エコー検査を施行するか?」が心筋炎救命の鍵となる.心臓超音波検査では,左室収縮低下,僧帽弁逆流や心嚢液を認める.また,劇症型では心筋浮腫を反映してしばしば心筋肥厚を伴う.ギャロップや肝腫大などの理学的所見に注意を払うと共に,心筋逸脱酵素や心電図もチェックして,「心筋炎が怪しい症例」では積極的な超音波検査が不可欠である.
【ショック状態の評価としての心エコー検査】
極度にグッタリした子供が外来受診した際,左室径と左室内径短縮率(左室収縮の程度)から,ショック状態であるのか?またその原因が何なのか?をある程度推察できる.「著明に小さい左室径」では循環血液量減少性ショックが疑われ,生理的食塩水30ml/kgの急速静注で状態を改善させることができる.下大静脈径も循環血液量の評価にある程度有用である.左室径や下大静脈径の年齢別正常値を知っておく必要がある.
【Oncology emergency】
ALLでは前縦隔にHodgkinリンパ腫は中縦隔に腫瘤形成し,心臓や気管を圧排する場合がある.心嚢液貯留(心タンポナーゼ)や胸水貯留を生じて循環破綻をきたす例があり,超音波検査が診断の糸口になる場合が稀でない.