Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
ワークショップ 産婦人科 日本超音波医学会としての胎児形態観察項目を考える-日本産科婦人科学会推奨項目との関係

(S316)

当院での胎児超音波スクリーニング -target screeningの実践-

Fetal Ultrasound Screening at Our Hospital -Practice of the Target Screening-

沖本 直輝, 塚原 紗耶, 矢野 肇子, 福井 花央, 萬 もえ, 山下 聡美, 立石 洋子, 熊澤 一真, 高田 雅代, 多田 克彦

Naoki OKIMOTO, Saya TSUKAHARA, Hatsuko YANO, Kao FUKUI, Moe YOROZU, Satomi YAMASHITA, Yoko TATEISHI, Kazumasa KUMAZAWA, Masayo TAKATA, Katsuhiko TADA

1独立行政法人国立病院機構岡山医療センター産婦人科, 2香川県立中央病院産婦人科

1Department of Obstetrics and Gynecology, Okayama Medical Center, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Kagawa Prefectural Central Hospital

キーワード :

超音波検査機器および技術の進歩により出生前に胎児異常を診断できる機会が増えてきている.しかしながら産科医は出生前スクリーニングをどこまですべきか,という点については結論が出ていない.出生前スクリーニングによって拾い上げることが可能である疾患で胎児および家族が恩恵を受けるものは,①生命予後不良な先天性疾患,②出生後早期に治療介入できれば劇的に予後改善が望めるもの,などが考えられる.逆に出生後に判明してから治療介入しても問題にならない疾患については出生前スクリーニングで重点的に拾い上げる必要性が低いと考えられる.
上記の考えのもと当院では2016年1月より同意が得られた妊婦を対象に画一化した胎児形態スクリーニングを開始している.スクリーニングの時期は妊娠18-20週(前期),妊娠26-30週(中期),可能であれば妊娠36週(後期)に行っている.
前期では日本産科婦人科学会が推奨しているチェック項目を中心に行っているが,加えて四肢末端の異常(手首の過屈曲など)の有無を確認している.この時期のスクリーニングで拾い上げを重視する疾患は18トリソミー,およびタナトフォリック骨異形成症などの生命予後が一般的に不良な先天性疾患としており,胎児心臓に関しては明らかな四腔断面異常や大血管の起始異常以外でなければ中期スクリーニングに確認することとしている.
中期では主に心臓スクリーニングを行うこととし,出生後早期治療介入で予後改善が期待できる大血管転位症,あるいは総肺静脈還流異常症に焦点を絞ってスクリーニングを行っている.総肺静脈還流異常症のスクリーニングとして従来のカラードプラ併用での左房への還流の確認に加えて近年有用性が報告されているpost LA space index(PLAS index)を計測項目に加えている.また妊娠30週前後に頭蓋内,および胎児腹腔内を再度観察している.
後期では大動脈縮窄症および動脈管早期閉鎖に焦点を絞り,3 vessel tracheal viewで両大血管の狭窄の有無を確認,また四腔断面で房室弁逆流の有無をカラードプラで確認している.
当院では現在上記のように拾い上げるべき疾患に焦点を絞ったスクリーニング(target screening)を行っているが,出生後に初めて判明した先天異常は多指症,外耳道閉鎖とスクリーニング対象外疾患のみであった.
胎児超音波スクリーニングを行いpick upすべき疾患と逆に確認しなくてもよいと考える疾患を明確にすることにより検者(産科医)も検査目的を見失わずにスクリーニングをすることができると思われる.またこのようなtarget screeningを実践する際には被検者(妊婦)も超音波検査での胎児異常の抽出には限界が存在することを検査前から知っていただく必要があると考えられる.