Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
ワークショップ 産婦人科 日本超音波医学会としての胎児形態観察項目を考える-日本産科婦人科学会推奨項目との関係

(S315)

本邦における超音波検査による胎児診断の現状に関する調査

Survey of prenatal diagnosis by ultrasonography in Japan

三浦 清徳, 山田 崇弘, 澤井 英明, 信実 孝洋, 田中 教文, 室月 淳, 工藤 美樹, 増﨑 英明

Kiyonori MIURA, Takahiro YAMADA, Hideaki SAWAI, Takahiro NOBUZANE, Norifumi TANAKA, Jun MUROTSUKI, Yoshiki KUDO, Hideaki MASUZAKI

1北海道大学医学部産婦人科, 2兵庫医科大学産婦人科, 3広島大学医学部産婦人科, 4宮城県立こども病院産婦人科, 5長崎大学医学部産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, Hokkaido University School of Medicine, 2Obstetrics and Gynecology, Hyogo College Of Medicine, 3Obstetrics and Gynecology, Hiroshima University School of Medicine, 4Obstetrics and Gynecology, MIYAGI Children's Hospital, 5Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University School of Medicine

キーワード :

【目的】
日本産婦人科学会周産期委員会内「遺伝学的疾患評価のあり方に関する小委員会」では,超音波検査を用いた出生前診断の現状把握と今後の方向性についての知見を得るため,本邦における超音波検査による胎児診断の現状に関する調査を行った.
【対象と方法】
北海道,東京,兵庫,広島および長崎県において産科医療補償制度に登録している556施設(北海道108,東京206,兵庫118,広島66,長崎58施設)に妊婦健診で行う超音波検査回数に関する1次調査を行った.ついで,胎児超音波検査(精密検査)を実施していると回答した117施設を対象に胎児超音波検査の実施体制について2次調査を行った.
【結果】
1次調査の回答率は45.7(254/556施設),2次調査のそれは81.2%(95/117施設)であった.
1次調査によると,超音波検査(妊婦健診で行う通常検査)の回数は,14回以上が152施設(63%),10-13回が62施設(25%),5-9回が26施設(10%),5回未満が4施設(2%)であった.また,超音波検査に際して,妊婦の同意を得ている施設は95施設(38%),同意を得ていない施設は161施設(62%)であった.妊婦の同意を得ていると回答した95施設のうち,胎児超音波検査にのみ同意を得ている施設は25施設,通常超音波検査及び胎児超音波検査で同意を得ている施設は26施設,残りの44施設については胎児超音波検査のみか否かの回答が得られなかった.同意を得る方法については,書面が40施設(44%),口頭は48施設(53%),その他が3施設(3%)であった.
2次調査では,胎児超音波検査を行っている85%(81/95施設)の施設において,産婦人科専門医が検査を担当していた.超音波検査の専門家である超音波専門医あるいは超音波検査士が胎児超音波検査を担当している施設は,それぞれ19%(18/95施設),22%(21/95施設)であった.また,胎児心臓スクリーニング検査について,80%(76/95施設)の施設において産婦人科専門医が担当していた.
超音波専門医あるいは超音波検査士が検査を担当している施設は,それぞれ17%(16/95施設),21%(20/95施設)であった.
【考察】
1次調査により,本邦の妊婦健診では頻回に超音波検査が実施されていることが確認された.また,超音波検査で妊婦の同意を得る必要があるという意識は未だ浸透していないと考えられた.同意を得る際の説明者は97%の施設で医療者(医師・助産師・看護師)が説明しているが,その方法は53%の施設が口頭のみで同意を得ている状況であり,同意の取得方法についても今後の議論が必要と思われた.2次調査では,胎児超音波検査(精密検査)の担当者として,超音波検査士あるいは超音波専門医が担当している施設は,それぞれ20%程度であった.胎児超音波検査(精密検査)による出生前診断では正常所見であるのか否かの高い診断精度が求められるので,その実施体制の整備には日本超音波医学会として胎児診断の超音波専門医や超音波検査士の養成を考える必要がある.