Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科2 周産期領域における超音波ドプラ法の意義

(S313)

妊婦健診における胎児中大脳動脈血流収縮期最高速度の有用性の検討

Fetal middle cerebral artery peak systolic velocity can be an important parameter in evaluating fetal condition

田野 翔, 伊吉 祥平, 山田 拓馬, 竹田 健彦, 宇野 枢, 眞山 学徳, 鵜飼 真由, 岸上 靖幸, 小口 秀紀

Sho TANO, Shohei IYOSHI, Takuma YAMADA, Takehiko TAKEDA, Kaname UNO, Michinori MAYAMA, Mayu UKAI, Yasuyuki KISHIGAMI, Hidenori OGUCHI

トヨタ記念病院周産期母子医療センター産科

Department of Obstetrics, Perinatal Medical Center, TOYOTA Memorial Hospital

キーワード :

【目的】
胎児中大脳動脈血流収縮期最高速度(MCA-PSV)は胎児貧血の診断に有用とされているが,多数例による妊婦健診での有用性についての本邦での報告は極めて少ないため,今回検討を行った.
【対象・方法】
2008年6月から2016年12月までに当院でMCA-PSVを測定した胎児を対象とし,MCA-PSVが2回以上1.5MoMを超えた場合をMCA-PSV高値として,MCA-PSVのスクリーニングとしての有用性を後方視的に検討した.
【結果・考察】
MCA-PSVを測定した胎児は2719例で,測定回数はのべ9576回で,MCA-PSVが1.5MoMを超えたのは156例(5.7%),195回(2.0%)であった.2回以上MCA-PSVが1.5MoMを超えたのは31例(1.1%)であった.2回以上1.5MoMを超えた31例中,胎児異常を認めた症例は10例であり,陽性適中率は32.3%であった.胎児異常の内訳は,胎児発育不全(FGR)が7例,胎児貧血が1例,心室中隔欠損症(VSD)が1例,先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症が1例であった.VSDの症例は32週,37週で高値を示し,分娩後にVSDと診断した症例であった.また,先天性CMVの症例は,脳に異常がなかった26週で高値を示し(図),30週で脳室拡大を認め,34週以降は高値を示していた.胎児貧血やFGRでMCA-PSVが上昇するとの報告1)や,早発型新生児敗血症と生直後の新生児におけるMCA-PSVの上昇に有意な関連性があるとの報告がある2).しかし,TORCH症候群を含む感染症と胎児のMCA-PSVに関連があるとの報告はない.先天性CMV感染の出生前診断はPCR法での羊水からのCMV DNAの検出やCMV抗体スクリーニング検査,胎児脳室拡大などの異常所見であるが一定のコンセンサスは得られていない.
【結論】
MCA-PSVは,胎児貧血の診断に有用とされているが,それ以外にFGR,VSD,先天性CMV感染などでも高値を示す可能性が示された.特に先天性CMV感染症では,脳室拡大を認めた後は持続的に高値を示したが,脳室拡大をきたす前にも異常高値を示しており,先天性CMV感染症の早期診断に胎児のMCA-PSVの上昇が有用である可能性が示唆された.
1)Mari G, et al: Middle cerebral artery peak systolic velocity: a new Doppler parameter in the assessment of growth-restricted fetuses. Ultrasound Obstet Gynecol. 2007;29:310-6.
2)Basu S, et al: Cerebral blood flow velocity in early-onset neonatal sepsis and its clinical significance. Eur J Pediatr. 2012;171:901-909.