Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科2 周産期領域における超音波ドプラ法の意義

(S312)

超音波ドプラ法による胎児発育不全における冠動脈血流評価

Doppler examination of "heart sparing effect" in growth-restricted fetuses

宮下 進

Susumu MIYASHITA

獨協医科大学総合周産期母子医療センター

Perinatal Medical Center, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
FGR(胎児発育不全)では心筋への血流再分配により冠動脈血流が増加することが報告されているが,その検出方法や意義は確立していない.我々は超音波Doppler法による胎児右冠動脈遠位部(dRCA)血流の評価に着目し,本研究では胎児心機能や周産期転帰との関連を解析することを目的とした.
【方法】
本研究は院内倫理委員会で事前に審査され承認を得た.2014年4月から2016年12月まで当院で分娩管理をおこなったFGR 80例について後方視的に解析した.右室自由壁外側の心尖側1/3の範囲を遠位部と定義し,colorまたはpower Dopplerを用いて同部位の冠動脈血流信号を探索,描出を試みた.血流速度レンジは15-25 cm/s,探索時間は30秒以内とした.心嚢水の振動信号を除外するために,pulsed Dopplerにて冠動脈に特徴的である拡張期優位の血流速度波形が描出される場合のみをdRCA+群,それ以外をdRCA-群とした.これら冠動脈血流評価所見は分娩様式決定には用いられなかった.出生前7日以内における羊水量(AFI),心胸郭面積比(CTAR),心機能指標(中大脳動脈/臍帯動脈PI比(CPR),心室内径短縮率(FS),心拍出量(CCO),臍帯静脈血流量(UVFV),Tei index(MPI))および周産期転帰(分娩週,出生体重,臍帯動脈血pH,胎児機能不全,周産期死亡)を比較検討した.
【成績】
対象症例数は35/45例(dRCA+群/-群)で検査週および推定体重Z-scoreに有意差は認めなかった.dRCA+群ではAFIは有意に小さく(9.8cm(2.6,18.5)/12.0cm(3.9,19.5),P=0.018)(中央値(最大値,最小値),CTARは大きく(40.6%(30.2,52,8)/34.4%(28.8,44.1),P<0.001),分娩様式として胎児機能不全による胎児適応での帝王切開が有意に高率であった(45.7%/22.2%,P<0.001).CCO, UVFV, CPR, FS, MPI,出生週,出生体重,臍帯動脈血pHおよび周産期死亡について有意差は認められなかった.
【結論】
dRCA+群てはCTARが大きく心機能は保たれていたが,心筋への慢性的な血流再分配(heart-sparing effect, myocardial re-distribution)にともなう保護的な現象である可能性が考えられた.dRCA血流の描出とbrain-sparing effectやCTG所見との関連は認められなかった.しかしdRCA+群では最終的に胎児機能不全となるリスクか高いことに留意する必要がある.