Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科1 生殖医療における超音波の意義と再評価

(S309)

子宮腺筋症合併不妊症に対する生殖補助医療での画像評価の意義

Significance of image evaluation in infertile women with severe adenomyosis attempting assisted reproductive technology

北島 道夫, 増﨑 英明

Michio KITAJIMA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学医学部産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University School of Medicine

キーワード :

【目的】
子宮腺筋症は子宮筋層内に子宮内膜類似の組織が周囲の繊維化を伴いつつ浸潤し,疼痛や過多月経を主徴とする疾患で,その臨床的診断には超音波検査やMRIによる画像所見が重要である.本邦での不妊女性の年齢の上昇に伴い,子宮腺筋症合併不妊症を取り扱う機会は増加しており,生殖補助医療(ART)が適用されることもあるが治療成績は必ずしも満足のいくものではない.一方,子宮腺筋症では機能温存手術として開腹あるいは腹腔鏡下に病巣減量術が選択されることがある.今回,当科で病巣減量術とARTを併用した子宮腺筋症合併不妊症での治療成績を検討し,画像検査の意義について考察した.
【対象および方法】
2012年から2016年までに当科でARTを施行した子宮腺筋症合併不妊症15例(採卵周期24周期,凍結融解胚移植周期12周期)を対象として後方視的に検討した.15例中8例でARTの前後で開腹あるいは腹腔鏡補助下の病巣減量手術を施行していた.ARTの治療内容や成績に対する腺筋症の影響およびそれに対する手術の効果を評価し,また,不妊治療の方針を決定する際の超音波検査やMRIの有用性について検討した.
【結果】
対象の平均年齢は38.1±2.9才(範囲32-41才)で,15例中11例が原発性不妊症であった.ART開始前に血清AMHを測定した10例中5例ではAMH<1.0ng/mLで,平均採卵数は5.2±3.3個,24周期中10周期(42%)で卵巣刺激への反応不良あるいは形態良好胚が得られず胚移植キャンセルとなり,5周期で全胚凍結を行った.1例では調節卵巣刺激中の超音波検査で腺筋症病巣の増悪が認められたため胚移植をキャンセルし全胚凍結を行った.新鮮胚移植周期で妊娠した2例はいずれも限局性の小病変で外科処置は行っていなかった.凍結融解胚移植で3例4周期で妊娠が成立し(正期産3,流産2,妊娠継続中1)すべて病巣減量術後であった.腫大した子宮体部と癒着した卵巣により採卵困難でARTがキャンセルになったものが2例あったが,うち1例はその後自然妊娠し現在妊娠継続中である.
【結論】
子宮腺筋症合併不妊症に対するARTでは,調節卵巣刺激中の高エストロゲン暴露による病変の増悪,高年齢や卵巣子宮内膜症の合併による卵巣予備能の低下,あるいは骨盤内癒着による採卵困難などが問題となり,経腟超音波検査はこれらの評価に有用である.胚凍結を優先させ外科的に病巣を可及的に縮小させたのち融解胚移植を行うことが治療成績の向上に寄与すると考えられた.