Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科1 生殖医療における超音波の意義と再評価

(S307)

超音波からわかる卵巣機能不全

Identification of ovarian dysfunction using ultrasound

河村 和弘

Kazuhiro KAWAMURA

聖マリアンナ医科大学産婦人科学

Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

【目的および方法】
卵巣内の原始卵胞数は胎生期につくられ,出生後は形成されない.卵巣内の卵胞は加齢と共に減少し,卵巣内の残存卵胞数が1,000個以下となると,休眠原始卵胞の活性化が停止し,発育卵胞が消失して無排卵となる.その結果,卵胞由来のエストロゲン産生がなくなり,閉経に至る.また,残存卵胞数が1,000個近くまで減少した女性の多くは月経不順を経験し,これが卵巣機能不全の初発症状となることが多い.しかし,月経不順には卵巣性のものよりも,中枢性のものが多く,鑑別が必要となる.現在の所,この鑑別には超音波検査または血中抗ミュラー管ホルモン値が有用であり,ある程度卵巣機能不全の定量的な評価も可能である.卵巣機能不全を呈する患者は初経を迎える頃の若年者から40代まで幅広い.また,病的な進行例では早発卵巣不全をとなり閉経する.本発表では,超音波からわかる卵巣機能不全について,文献的な考察を行い,自験例の提示をする.
【結果と考察】
血中抗ミュラー管ホルモン値は卵巣機能不全の鑑別診断に多用されている.抗ミュラー管ホルモンは1次卵胞から前胞状卵胞までの発育段階の卵胞から産生されるため,その値は卵巣内の残存卵胞数を良く反映する.また,月経周期で測定値が変化しないため,いつでも検査が可能である.さらに,若い女性にとって抵抗感のある内診台での診察が不要といった利点が挙げられる.しかし,1)自費検査となり,超音波検査よりコストが高い,2)自家検査を行える施設はほとんどなく,外注検査となり結果が出るまで1週間近くかかる,といった問題点がある.一方,超音波検査では描出可能な胞状卵胞数(AFC: antral follicle count)を測定し,その値で卵巣機能を評価する.AFCは血中抗ミュラー管ホルモン検査値の結果と良く相関し,AFC値が高いほど残存卵胞数が多いと推測される.AFC測定の利点として,産婦人科のほとんどで実施可能であり,その場で診断できる点が挙げられる.問題点としては,胞状卵胞がない状態まで卵巣機能が悪化した患者では,AFC値はゼロとなり卵巣そのものを同定出来なくなる.また,体型にもよるが経腹超音波では正確な計測が難しい場合があり,経腟超音波検査の方が正確に計測できるが,内診台での治療が必要となる.さらに,月経周期の影響を受けるため,月経直後など決まったタイミングでの測定を考慮する必要がある.
【結論】
超音波検査は簡便に卵巣機能不全を診断することができるため,産婦人科外来で実施する初期スクリーニング検査として有用である.