Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科1 生殖医療における超音波の意義と再評価

(S307)

生殖医療の超音波検査 over view

Ultrasound in Reproductive Medicine: Over view

関谷 隆夫, 西尾 永司, 藤井 多久磨

Takao SEKIYA, Eiji NISHIO, Takuma FUJII

藤田保健衛生大学医学部産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Fujita Health University

キーワード :

超音波診断装置の出現によって産婦人科の診療形態は大きく変化した.超音波医学の進歩には医師や技師の創意が不可欠であったが,常に診断機器の技術的進歩がこれをリ-ドしてきたことに異論はない.特に小型化された高周波探触子の開発に伴う経腟走査法の出現は,骨盤内臓器の詳細な観察を可能とし,本法が内診とともに行う外来診療の基本検査としての役割を果たようになった.また近年では,超音波ドプラ法による骨盤内臓器の血流動態の評価が一般化し,3次元法や,造影超音波検査も行われている.
一方,産婦人科医療において最も進歩した分野として生殖医療が挙げられる.1980年代迄のいわゆる不妊治療においては,タイミング療法をはじめ古典的排卵誘発や人工授精が行われてきたが,排卵誘発薬およびその投与法をはじめ,細胞培養や培精技術の進歩により,体外受精・胚移植を含む生殖医療が広く普及するに至った.こうした医療を行う上では,卵巣の形態とその内部で発育する卵胞や,受精卵の着床部位としての子宮,さらには卵管疎通性の評価が不可欠であり,内分泌系を主体とした血液検査と並んで画像診断の重要性は非常に高い.このうち,超音波検査は侵襲性が低いと同時に,リアルタイム性の高さを併せ持ち,生殖外来におけるスクリーニングとして,さらには精密検査の1st choiceとなる画像診断法である.
まず診断装置については,走査線密度の増加や走査角の拡大,さらに作像技術の進歩に伴って,Bmode像の描写力が向上し,内性器の詳細な描写が可能となった.また,ドプラ法においても,パワードプラ法を活用した低速血流の検出能力が向上し,さらに装置に付属したアプリケーションの活用によって血流の定量化も行われ,より精度の高い子宮や卵巣血流の評価が可能となった.また,近年普及した3次元法は,内性器の立体像や連続する任意断面像の表示を行うことにより,子宮においては奇形や腫瘍性病変の診断精度を向上させ,卵巣や卵胞の体積計測により,卵巣予備能の評価や卵胞モニタリングの新しいシステムの構築に寄与している.さらに,造影超音波検査法としてのSonohysterographyは子宮腔内病変の診断精度を向上させ,Sonohysterosalpingographyによる卵管の疎通性や形態の評価も行われるようになった.
ここでは,生殖医学領域における超音波検査の技術とその活用の可能性について総合的に示したい.