Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科2 国際産婦人科超音波学会(ISUOG)診療ガイドラインについて考える

(S305)

ISUOG診療ガイドライン-胎児心臓超音波

Screening Examination of the Fetal Heat under the ISUOG Practice Guideline

山本 祐華

Yuka YAMAMOTO

順天堂大学医学部附属静岡病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Juntendo University Shizuoka Hospital

キーワード :

国際産婦人科超音波学会(ISUOG)は,2006年に提示した診療ガイドラインを,2013年に改訂しアップデートした.本邦でも2006年に日本小児循環器学会より胎児心エコー検査ガイドラインが作成され,一定基準の胎児心エコー検査が期待されるようになっている.本シンポジウムではアップデートされたISUOGの診療ガイドラインについて,わが国の実情を考慮した上で,その問題点や形態スクリーニングについて考える事を目的とした.
この度改訂に伴い,新しく追加推奨された項目は四腔断面(a)と流出路断面(b)である.今までの基本的な胎児心臓スクリーニングは心臓の位置,大きさ,内臓位との関係,左右対称な四腔断面,心嚢液や心筋肥厚がないかなどが観察ポイントとして挙げられていた.改訂されたガイドラインでは四腔断面におけるチェックポイントが詳細に示されている.心軸は45±20°であり,心拍数は120-160bpm,心房は左右差なく,卵円孔は右→左に開放されている.肺静脈の流入も最低2本左心房に確認される.また調節帯が存在する右室が解剖学的にも右側にあり,心室にも左右差を認めない.そして房室弁は2個独立して確認され,三尖弁は僧房弁より下方に付着する.
流出路では,左右からほぼ同じサイズの血管が1本ずつ流出し,クロスすることが最低条件としている.参考所見として,three vessel view(3VV)やthree vessel tracheal view(3VT),右室流出路や左室流出路の評価が提示されている.ISUOGのガイドラインではカラードプラーは必須項目としては考えられていない.
本邦では2015年に日本産科婦人科学会周産期委員会より妊娠18―20週における胎児超音波検査の推奨チェック項目が提示された.胸部については①心臓の位置はほぼ正中で軸は左に寄っているか,②左右心房心室の4つの腔が確認できるか,③胸腔内に異常な像を認めないかの3項目を挙げている.ここでは流出路の評価は提示されず,出生前診断が児の予後を大きく改善すると言われている大血管転位症のスクリーニングは含まれないことになる.日本の産科医療体制として,大学病院や一般病院だけでなく,多くの開業医によって成り立っているため,スクリーニングで流出路を確認することが重要と思われる.一定基準の医療を提供するために,ISUOGの診療ガイドライン改訂に伴う日本のスクリーニングにおけるチェック項目の見直しが望まれる.