Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科2 国際産婦人科超音波学会(ISUOG)診療ガイドラインについて考える

(S304)

当院における胎児超音波スクリーニング検査での各所見の同定率

Identification rate in fetal ultrasound screening.

関原 真紀, 松田 秀雄, 川上 裕一, 中田 雅彦

Maki SEKIHARA, Hideo MATSUDA, Yuichi KAWAKAMI, Masahiko NAKATA

1松田母子クリニック検査科, 2松田母子クリニック産婦人科, 3東邦大学医療センター大森病院産婦人科

1Clinical Laboratory, Matsuda Perinatal Clinic, 2Obsterics and Gynecology, Matsuda Perinatal Clinic, 3Obsterics and Gynecology, Department of Obsterics and Gynecology,Toho University Omori Medical center

キーワード :

【目的】
胎児超音波スクリーニング検査における項目は各施設で独自に設定されているが,所見の有無が有意なものであるかの判断には,各項目が確認できているか否かを考慮する必要がある.本研究では,超音波検査士が担当する胎児超音波検査における各所見が同定できなかった頻度(同定不能率)を検討することを目的とした.
【対象】
2015年4月から2016年3月の期間に,胎児超音波スクリーニング検査を妊娠20週前後と妊娠30週前後に行った妊婦537例とした.
【方法】
スクリーニング検査の対象は,妊娠20週前後と30週前後とし,検査機器はGE社VOLSON E6を用いた.検査の目的は,児の予後に大きく影響する粗大な形態異常の発見とした.検査項目は,ISUOGのガイドラインに沿って頭部,胸部,腹部,四肢,脊柱とした.頭部の観察項目は,頭蓋骨,透明中隔腔,正中鎌,視床,側脳室,小脳,後頭蓋窩とした.胸部は,腫瘤の有無,胸郭の形態・大きさ,肺の大きさとした.心臓は,四腔断面,流出路,流入路,3VV,3VTV,大動脈弓とした.腹部は,胃胞,肝臓,腎臓,膀胱を観察した.検査結果は,観察項目を列挙したチェックシートを作成し,所見なし・再確認・要精査のいずれかを医師に報告した.また,同定不能の場合は,レポートにその旨を記載した.各所見について,後方視的にそれぞれの所見が確認できているか否かを検討し,同定不能率を表した.
【結果】
各部位における胎児超音波スクリーニング検査での同定不能率を示す.
【考察】
胎児超音波スクリーニング検査における各所見の同定不能率を検討したところ,必ずしも100%の状況で所見が確認できる訳ではないと言える.特に,児の胎向に依存する口唇や心臓の所見は同定不能となることがあるが,奇形の頻度を考えると,同定不能率を減じる方法を検討する必要がある.また,心臓の所見の中で,妊娠20週前後における大動脈弓の同定不能率は24.8%であった.さらに,妊娠20週前後と妊娠30週前後の2回の検査のうち,いずれか1回でも確認できたものを同定可能とすれば,同定不能率は8.9%であった.しかし,胎児超音波スクリーニング検査の普及に伴い,患者意識が向上している昨今,100%を求める患者との意識のずれが懸念される.スクリーニング検査自体が確実なものでないことを認識し,啓蒙することが必要と思われた.