Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科1 新しい技術の産婦人科領域への導入

(S301)

HDliveFlowによる婦人科悪性腫瘍の診断

HDliveFlow for diagnosis of gynecologic malignant tumor.

田中 圭紀, 金西 賢治, 秦 利之

Tamaki TANAKA, Kenji KANENISHI, Toshiyuki HATA

香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学

Perinatology and Gynecology, Kagawa university graduate school of medicine

キーワード :

超音波検査は婦人科腫瘍の有用な診断ツールの一つであり,新しい描出モードの一つにHDliveFlowが登場し,血管走行をより明瞭に描出することができるようになり,腫瘍における血管構築の特徴をより把握しやすくなった.今回我々は,婦人科悪性腫瘍においてこの手法を用いて腫瘍血管の描出を試み,特徴的血管像を同定できたので,報告する.
症例は子宮頸癌5例,子宮頚部原発悪性リンパ腫1例,子宮体癌5例,卵巣癌2例(原発性1例,転移性1例)である.
子宮頸癌はいずれもbalky tumor(>4cm)であり,腫瘍を取り囲むようにリング状の血管が走行し(vascular ring pattern),腫瘍内部体部側に豊富な血流を認め,一方で膣側は血流がやや乏しいという特徴的な血流パターンがすべての症例で認められた.
放射線同時併用化学療法(CCRT)治療前後で比較した症例ではリング状血管は残存するも,腫瘍内血管は減少していた.今後,治療効果判定の一助として有用かもしれない.
悪性リンパ腫では腫瘍辺縁から腫瘍内部に向かって放射状に走行する無数の血管が描出され,その血管走行は子宮頸癌とは明らかに傾向が異なっていた.
子宮体癌では明らかに共通するような血管走行パターンは認められなかったが,症例によっては筋層浸潤を反映している可能性のある血流を捉えることができた.
卵巣癌においてまず原発性卵巣癌では血管径の大小異なる豊富な腫瘍血流がネットワークを形成(vascular-net pattern)している様子が明瞭に描出された.
しかし,転移性卵巣癌ではメインの腫瘍血管から複数の分枝血管が分かれており,その血管構築はvascular-tree patternとして描出された.
このように腫瘍の形態により血管走行パターンが異なり,このことから腫瘍が原発か転移性かの鑑別に有用である可能性が示唆された.
HDliveFlowは婦人科悪性腫瘍の特徴的な血管構築像を描出できる可能性が示された.今後,その診断および治療効果判定における本法の有用性について,さらに症例数を蓄積し検討していく予定である.