鵜飼 真由, 安藤 万恵, 山田 拓馬, 竹田 健彦, 田野 翔, 宇野 枢, 眞山 学徳, 岸上 靖幸, 小口 秀紀

Mayu UKAI, Mae ANDO, Takuma YAMADA, Takehiko TAKEDA, Sho TANO, Kaname UNO, Michinori MAYAMA, Yasuyuki KISHIGAMI, Hidenori OGUCHI

トヨタ記念病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, TOYOTA Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
Superb Microvascular Imaging（SMI）は従来のドプラ法と比較して高感度，高分解能，高フレームレートかつノイズが少ないという利点を有しており1），これまで検出困難であった低流速の血流も，非造影下に明瞭に可視化する優れた血流表示法である．
【目的】
今回我々は産婦人科領域におけるSMIの臨床的有用性について検討した．
【対象と方法】
2015年9月から2017年1月までの間に当院で診察した子宮体癌，子宮頸癌，悪性卵巣腫瘍患者と非悪性腫瘍患者，妊婦を対象とし，TOSHIBA Aplio300または500でSMIを施行し，腫瘍や胎盤の血流を評価した．
【成績】
子宮内膜は非悪性腫瘍群では全例で血流を認めなかったが，子宮体癌患者では，比較的早期の症例でも子宮内腔の腫瘍性病変内に樹枝状に分布する微細な腫瘍血管を描出できた．子宮頸癌患者では腫瘍内に豊富な微細血流を認め，腫瘍の輪郭の評価や，化学療法や放射線療法に対する治療効果判定に有用であった．悪性卵巣腫瘍では充実性腫瘍や壁在結節を伴う腫瘍において腫瘍内に流入する樹枝状血流を認め，良悪性の鑑別に有用であった．婦人科悪性腫瘍においてSMIは，従来の血流表示法であるColor Doppler Imaging（CDI）やAdvanced Dynamic Flowより腫瘍内血流の描出感度が高く，CDIやPower Doppler Imagingと比較し，ブルーミングが少なく，より鮮明に悪性腫瘍の樹枝状血管が高確率に描出できた．妊婦では従来，臍帯動脈や中大脳動脈などの比較的流速の速い大血管でしか血流評価ができなかったが，SMIでは胎盤の低流速な微細血管の血管構築が可能で，胎児発育不全の原因となる胎盤梗塞の有無の評価に有用であった．
【結論】
SMIは，従来の表示法では描出できなかった低流速の血流も可視化でき，腫瘍や腫瘍周囲の血流の評価，胎盤血流評価に有用であった．産婦人科領域における報告は少なく，今後も更なる症例の集積と検討が期待される．
1）畠　二郎，佐藤武史，掛江明弘．特集超音波診断装置の新潮流低流速検出能に優れた血流イメージング- Superb Microvascular Imaging（SMI）の特徴と臨床的有用性．映像情報Med 2015;47（5）：438-443.