Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科1 新しい技術の産婦人科領域への導入

(S299)

SMIの産婦人科への導入

SMI in Obstetrics and Gynecology

長谷川 潤一

Junichi HASEGAWA

聖マリアンナ医科大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

SMI(Superb Micro-vascular Imaging)は血流を表示する技術の中で,独自のアルゴリズムを用いて組織の動きの特徴を解析することで,その信号を分離することでモーションアーチファクトを大幅に減らし,速度的に組織の動きと重なっている微細で低流速な血流を捉えて画像化することが可能である.本講演では,SMIの産婦人科領域での今後の可能性について論じる.
産婦人科領域におけるSMIの利点
産婦人科で対象とする子宮や卵巣などの臓器は小さく,その中の血流は微細である.微細な血流をきれいに描出することのできるSMIは産婦人科領域においても役立つはずである.また,妊娠中の超音波検査中には,大きくなった子宮を母体の呼吸運動や大動脈の拍動が動かすことや,胎動の影響をうけることがある.このモーションアーチファクトを軽減できることは,周産期の超音波検査において有利である.SMIでは,ドプラ使用時でもフレームレートが50 frame/sec以上と非常に高く設定でき,視認性にも優れている.使用例を以下に示す.
1)胎児形態評価
近年,胎児の形態評価は,妊娠初期に前倒しに行われる傾向にある.胎児の形態評価は,通常Bモードで行われ,心臓などの早い血流がある臓器に対してはカラードプラなどが併用される.SMIでは,流速の低い脳や肺の末梢の血管,腎臓の末梢血管,肺静脈などまで,多少の胎動があるなかでも血流を描出することが可能である.胎児の各種病変の診断に役立つ可能性がある.
2)超音波発生学的評価
形態異常のみならず発育や機能的な評価としても応用できる可能性がある.従来の発生学は,検体などの組織標本を作製し解析することで行われてきたが,高解像度の超音波断層法は,組織標本を作製しなくとも,同一個体での組織断面の観察を可能とするだけでなく,発育をトレースすることも可能である(超音波発生学;sonoembryology).
3)血流障害の評価
産科領域でのドプラ評価は,子宮動脈本管や臍帯動脈,中大脳動脈といった比較的太い,流速の速いところで行われている.SMIでは,末梢組織における血流障害をとらえることができる.各種臓器の,末梢の低流速な血流状態を評価できることは臓器自体の機能評価に繋がる.
4)腫瘍の質的評価
すでに他科の腫瘍領域では利用されているが,微細な血流を描出できるSMIによって卵巣腫瘍や,子宮内腫瘍などの血流評価,質的診断,治療効果の判定に役立つ可能性がある.