Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 呼吸器
シンポジウム 呼吸器 呼吸器超音波のこれまでとこれから

(S293)

呼吸器超音波のこれまでとこれから

Chest Ultrasonography: Past and Futute

小林 英夫

Hideo KOBAYASHI

防衛医科大学校呼吸器内科

Department of Respiratory Medicine, National Defense Medical College

キーワード :

本邦における呼吸器超音波学は1950年代には端緒につき,1980年代には日常臨床の必須ツールとして定着した.当初は胸部CTの普及前であったことから,胸部単純X線の不足情報をいかに入手するかということが超音波の役割となっていた.体表からの観察による多くの知見確立にとどまらず,体腔内(経食道・経気管支)からの縦隔観察も2000年代までには標準手技として肺癌診療に不可欠なものとなった.
一方,これまで呼吸器科医が主として蓄積した様々な情報とは別途な観点のもとで,近年,救急医療ではpoint of care(POC)と称する診療のfirst stepとして超音波を活用するアイデアが登場し,急速に普及している.含気臓器であるがゆえに肺の超音波観察にはアーチファクト発生が障害だったが,POCではアーチファクトでさえも利用するという逆転的発想が登場した.ただし,POCは呼吸器科的知見と無関係に発展しているというジレンマも存在する.
本シンポジウムでは,日本の呼吸器超音波学がこれまで蓄積した知見を全体で確認しあい,呼吸器POCとお互いの長所を補完しあって,所見や概念の共有化を図っていくために計画したものである.シンポジストには呼吸器内科医,呼吸器外科医,救急医それぞれに得意分野を講演していただき,演者は呼吸器超音波全体を俯瞰し,過去と将来にわたっての取りまとめ作業を担当させていただく.とりわけ,海外発のPOC用語には従来の呼吸器学定義と合致しないものも存在していることに注意を喚起したい.
本シンポジウムが契機となって,これから呼吸器超音波学は新たな飛躍をなしえるものと期待する.