Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 呼吸器
シンポジウム 呼吸器 呼吸器超音波のこれまでとこれから

(S291)

呼吸器内視鏡領域における超音波,これまでとこれから

Endobronchial Ultrasonography, Current Status and Future Directions

中島 崇裕, 吉野 一郎

Takahiro NAKAJIMA, Ichiro YOSHINO

千葉大学大学院医学研究院呼吸器病態外科学

Department of General Thoracic Surgery, Chiba University Graduate School of Medicine

キーワード :

呼吸器内視鏡領域での超音波の利用は,1990年代より始まった.超音波プローブには,挿入方向に対して長軸方向のスキャンを行うconvex typeと,プローブ全周のスキャンを行うradial typeがあるが,初めに開発されたのはradial scanning transducerを備えた超音波プローブ(radial probe endobronchial ultrasound: RP-EBUS)である.超音波プローブを用いた気管支腔内超音波断層法(Endobronchial Ultrasonography)は,1992年にHrterらが正常肺組織および肺癌の診断に臨床応用し報告した.その後の機器の発達・改良により超音波プローブの性能向上および小型化が得られ,中枢気道病変やその周囲リンパ節の評価に加え末梢病変の診断にも使用されている.肺末梢病変の診断目的に使用されるガイドシース法(EBUS-GS)は,本邦における臨床研究から大きく世界へと飛躍した検査法であり,最新の米国胸部疾患学会ガイドライン(ACCP guideline 3rd edition)においてもその使用が推奨されるに至っている.
一方,2002年には気道の長軸方向へのスキャンが可能であるコンベックス走査式プローブを気管支鏡先端に備えたコンベックス走査式超音波気管支鏡(convex probe endobronchial ultrasound: CP-EBUS)が開発され,臨床応用されるに至った.CP-EBUSの登場により,気管・気管支周囲病変に対するリアルタイムガイド下の生検および病理診断が可能となり,特に肺癌症例におけるリンパ節ステージングにおいては,大きなパラダイムシフトをもたらした.CP-EBUSによる経気管支針生検(EBUS-TBNA)は,開発から10年余りの短期間で,縦隔リンパ節ステージングにおけるbest first testと記載されるに至っている.しかしEBUS-TBNAは針生検であるため,これまでgold standardとされてきた縦隔鏡検査と比較すると,陰性的中率が低く,超音波ガイド下針生検陰性例では依然としてconfirmationのための追加生検(外科的生検)が推奨される.これらのlimitationを克服するため,生検デバイスの改良のほか,超音波画像解析によるリンパ節穿刺支援技術の開発を行ってきた.主観的評価によるBモード画像やドップラー画像の画像所見分類から,エラストグラフィーの所見,strain ratio,stiff area ratio,さらにはより客観的評価が可能となる周波数特徴量解析に基づくリンパ節転移予測システムの開発を行っている.最新の超音波技術と生検技術を組み合わせることで,EBUS-TBNAがより高精度かつ安全,低侵襲なリンパ節転移診断法となることを期待している.呼吸器内視鏡領域における超音波は,肺癌はもとより気道周囲に病変を生じる呼吸器・縦隔疾患に革新をもたらす技術であると考える.