Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 呼吸器
シンポジウム 呼吸器 呼吸器超音波のこれまでとこれから

(S291)

呼吸器超音波検査に必要な基礎的知識

Respiratory Ultrasound Fundamentals: Principles, Devices, and Patient Safety

紺野 啓

Kei KONNO

自治医科大学臨床検査医学

Department of Clinical Laboratory medicine, Jichi Medical University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
安全性や機動性,リアルタイム性の高さが特徴の超音波検査は,呼吸器領域の検査としても有用である.検査自体は容易であり,誰にでも一定の成果が得られやすいが,質の高い診療情報を得ようとするならば,明瞭な画像の取得とその正しい解釈が欠かせず,また安全性についても最大限の配慮が必要である.そのためには超音波の性質や診断装置の構造・作動原理についての理解が必要であり,装置の調整,画像解釈上の注意,検査の安全な運用などについての知識も必要である.本演題ではこれらについて概説する.
【超音波と超音波検査】
超音波は媒質の振動によりエネルギーが伝搬する物理現象「波」の一種であり,振動数(周波数)の非常に高い縦波である.超音波には波に共通の物理学的・音響学的性質があり,媒質である生体内を伝搬する際には減衰し,異なる媒質の境界面では屈折,透過および反射を生じる.これらの様態は,媒質の音速や音響インピーダンスなどの音響学的性質によって決まる.こうして生じる反射を用いて生体内の各種情報を得て診療に応用しようとするのが超音波検査である.
【超音波検査の実際】
超音波検査はBモードによる断層像が基本となる.画像取得のために使用可能なプローブの走査方式は,一般的な装置ではリニア型,セクタ型とコンベックス型で,それぞれに特定の周波数帯域が割り当てられたものが用意される.このうち呼吸器領域では主にリニア型とコンベックス型が用いられる.超音波の分解能と透過性はともに周波数に依存し,互いにトレードオフの関係にあるため,検査においては観察しやすい形状(走査方式)のプローブを選ぶだけでなく,周波数帯域も適切なものを選ぶ必要がある.このほか実際の検査では,フォーカスやSTC,ゲインなどの調節も原理を理解して適切に行う必要がある.
【アーチファクト】
アーチファクトは超音波画像にとって不可避の虚像である.様々なパターンで現れ画像を劣化させ,時には誤診を生む.成因としては組織の音響学的性質に起因するものや超音波診断の原理または装置の作動原理に起因するものなどがある.成因を理解して正しく見極めれば,逆に組織性状の推測などに有効活用することも可能で,呼吸器領域ではこうした活用も盛んに行われている.
【超音波検査の安全性】
超音波検査の安全性は,超音波を安全性に支障の無い範囲で使用することにより実現されている.検者はこうした背景を十分に理解し,ALARAの原則に則って安全性に最大限の注意を払いながら検査を行う必要がある.