Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器横断領域2 「温故知新」の超音波所見に挑む~サインやアーチファクトの検証~

(S284)

ミラーイメージの再検討

Our viewpoint on the mirror image

渡部 多佳子, 石田 秀明, 小松田 智也, 八木澤 仁, 小松田 広美, 宮内 孝治, 長沼 裕子, 大山 葉子, 長井 裕, 小川 眞広

Takako WATANABE, Hideaki ISHIDA, Tomoya KOMATSUDA, Hitoshi YAGISAWA, Hiromi KOMATSUDA, Takaharu MIYAUCHI, Hiroko NAGANUMA, Yoko OHYAMA, Hiroshi NAGAI, Masahiro OGAWA

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線科, 3市立横手病院消化器科, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5NGI研究所, 6日本大学病院消化器内科

1Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kosei Medical Center, 5Department of New Generation Imaging Laboratory, 6Department of Gastroenterology, Nihon University Hospital

キーワード :

日本超音波医学会用語委員会ではミラーイメージを"強い反射面の浅部にある像がその反射面の深部に反転した形にみえる虚像"と定義している.この定義ではミラーイメージを正確に表現出来ていないことを,我々は過去の日本超音波医学会学術集会で具体的な事例を挙げて報告してきた.しかし,2017年1月現在まだその定義の変更はなされていない.今回,我々は,ミラーイメージに関してのこの誤った認識を補正する目的で,下記の様な再検討を行ったので報告する.
【使用診断装置】
東芝社製:Aplio XG・Aplio 500,GE社製:LOGIQ E9,日立アロカ社製:Ascendus,Preilus.
【対象と方法】
肝S7,S8に位置し横隔膜に接した肝のう胞13例(男性5例,女性8例,年齢40-81歳,病変位置:S7:10例,S8:3例,のう胞径:7-20mm)で横隔膜に接しているため後方エコーはほとんど判定できないものを対象に,a)そのミラーイメージの後方エコーの状態を検討した.また,b)プローブを振りながらのう胞の実像とミラーイメージが常に同時に出現するか検討した.さらに,c)強調されて表示されるのう胞実像の前後壁に注目し,のう胞のミラーイメージが強調されて表示される箇所が横隔膜を挟んで対象になるか検討した.
【結果】
a)ミラーイメージは次の2型に大別可能であった;1)実像の対側に実像に接してミラーイメージが出現し,そのミラーイメージの背側に増強した後方エコーが認められるもの(11例),2)実像の対側ではない箇所にミラーイメージが出現し,そのミラーイメージの背側に増強した後方エコーが認められるもの(2例).どちらの場合も,実像ではみられなかった後方エコーの増強効果が認められた.後方エコーは不変または減衰した例はみられなかった.b)11/13例で実像とミラーイメージは同時に出現せず,片目ずつウインクするような現象(ウインク現象)がみられた.c)10/13例でのう胞のミラーイメージが強調されて表示される箇所が横隔膜を挟んで対象にはならなかった.
【まとめと考察】
超音波Bモード像は,音源から放射された超音波が生体組織を伝播した時に生じる組織内における各点の反射強度の差を輝度の差としてマッピングしたものである.実際の画像作成の工程では,放射された超音波が反射し音源に戻るまでの時間を測定し,これをもとに反射点までの距離を算出し,それを超音波の放射方向の該当する距離として表示する,といった単純なものである.ミラーイメージは直進した超音波が強い反射面で反射し,それが反射後にとらえた信号をその反射面の背側に表示するために起きる現象である.今回,我々が取り上げたのう胞のミラーイメージで興味深い所見は,実像ではみられなかった後方エコーの増強効果が認められた点で,これは,肝実質-のう胞-横隔膜-のう胞-肝実質を通過する超音波が二度目にのう胞を通過し肝実質に向かい,それまで(のう胞内を通過するため)減衰が少ない超音波が肝実質部を通過するため,その肝実質がミラーイメージでは高エコー帯として表示されることになる.また,実像とミラーイメージでは,その出現タイミングにずれがあった(ウインク現象).これらの点からも,ミラーイメージの考え方や定義には更なる慎重さが必要である.