長沼 裕子, 石田 秀明, 長井 裕, 小川 眞広, 大山 葉子, 渡部 多佳子

Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA, Hiroshi NAGAI, Masahiro OGAWA, Yoko OHYAMA, Takako WATANABE

¹市立横手病院消化器科, ²秋田赤十字病院超音波センター, ³N.G.I研究所, ⁴日本大学病院消化器肝臓内科, ⁵秋田厚生医療センター臨床検査科

¹Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, ²Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ³New Generation Imaging Laboratory, ⁴Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital, ⁵Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center

キーワード :

【はじめに】
Range-ambiguity artifact（RAA）は深部から反射してきた超音波信号が次の送受信時に受信されて実際よりも浅い位置に表示されるものである1）．繰り返し周波数（PRF）を下げることで消失し，他のアーチファクトや実際に存在する構造物との鑑別ができるため認識しておくことが重要である．RAAは昔から知られていたアーチファクトだが，機器の進歩に伴いリアルタイム性が増すことで出現頻度が増している1）．また，Searchlight phenomenon（SP）も新たなRAAの一表現型と考えられ2），そのような意味でRAAは古くて新しいアーチファクトといえる．ここではRAAに関するこれまでの検討をまとめて報告する．
【対象と方法】
2007年-2016年に腹部超音波検査で肝嚢胞内，肝実質内，胆嚢内にRAAを観察した117例において，RAAの特徴，PRFとの関係，造影モードやsuperb micro-vascular imaging（SMI）での出現の有無などを検討した．使用装置：日立社製Preirus，東芝社製Aplio500，XG, GE社製LOGIQ E9．
【結果】
①RAAは全例PRFを下げると消失し，フォーカスや周波数は関係なかった．視野深度を深くしてPRFを下げる方法が簡便であるが，装置に内蔵されたPRFを下げる方法や，IQenhance等の方法でも軽減した．②肝嚢胞の中など無エコー領域でRAAは目立つが肝実質上にも出現し，特徴は同様であった．③造影モードでRAAは増強するが，アーチファクトと造影剤からのハーモニック信号を区別可能な最新の機器では造影モードでのRAAは軽減していた．④胆嚢内で観察されるRAAには，十二指腸ガスのring-down artifactのRAAがあり（SP），十二指腸ガスのring-down artifactと同一音線上に出現することが特徴であった．SPはSMIでより高頻度に見られた．
【考察】
近年報告されたSPは消化管ガスのrign-down artifactのRAAであり新たに認識されたアーチファクトである．また，新技術であるSMIにおいても，flame rateが高いため，RAAが高頻度に観察され，SPの出現率も高くなる．RAAは機器の進歩に伴い，さまざまな形で出現してきており，それらを理解していくためには，RAAの機序や装置について知っておくこと，新たな技術に関する知識も持っておくことが大事である．
【文献】
1）Naganuma H, et al. Mobile echoes in liver cysts: a form of range-ambiguity artifact. J Clin Ultrasound 2010; 38: 475-9.
2）Naganuma H, et al. Searchlight phenomenon: a novel artifact of the gallbladder. J Med Ultrason 2016; 43: 219-25.