Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器横断領域1 腹部領域におけるPoint of care ultrasound ~minimum requirementは何か~

(S280)

ICUにおけるPOCUSには何が必要か

POCUS in ICU

中藤 流以, 畠 二郎, 今村 祐志, 眞部 紀明, 河合 良介, 谷口 真由美, 竹之内 陽子, 岩崎 隆一, 春間 賢

Rui NAKATO, Jiro HATA, Hiroshi IMAMURA, Noriaki MANABE, Ryousuke KAWAI, Mayumi TANIGUCHI, Yoko TAKENOUCHI, Ryuichi IWASAKI, Ken HARUMA

1川崎医科大学消化管内科学, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学附属病院臨床検査部, 4川崎医科大学総合内科学2

1Department of Gastroenterology, Kawasaki Medical School, 2Department of Endoscopy and Ultrasonography, Kawasaki Medical School, 3Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 4Department of General Intestinal Medicine 2, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景】
近年point-of-care超音波(以下POCUS)の有用性が注目されている.しかし,その定義,対象臓器や疾患,必要とされる手技などは明らかとなっていない.
【目的】
当施設でICU入院患者に対しベッドサイドで施行したUSを便宜上POCUSとし,その有用性をretrospectiveに検討する.
【対象と方法】
2014年1月1日から2016年12月31日の間に当院ICUでPOCUSを行った146件(男性99件,平均年齢67.5±17.7歳)を対象とした.施行者は医師6名(超音波専門医5名),超音波診療に従事している技師6名(超音波検査士4名)である.機器はToshiba Aplio,プローブは3 MHzコンベックスから24 MHzリニアまで各種を用いた.患者背景(性別,年齢,BMI),依頼目的,検査時間,US診断に関し検討を行った.依頼目的およびUS診断は既報を参考に7領域(肝胆膵,消化管,腎泌尿器,循環器系,婦人科,外傷,非特異的)に分類し,依頼時(検査前診断)領域とUS診断(検査後診断)領域との合致率を検討した.またPOCUSでの診断頻度,最終診断が得られたもの,診断できていなかった症例,USで緊急対応が必要と判断した症例について検討した.
【結果】
全体146件で,BMI 21.9±4.1 kg/m2,平均検査時間は13±7分であった.US目的領域は肝胆膵領域(39.0%)が最多でUS診断領域でも肝胆膵領域が最も多かった.検査前診断と検査後診断の領域合致率は45.2%,領域が異なったものは45.2%であった.USで最終診断が得られたものは113例(77.4%,うち造影US 39例),最終診断不明が26例(17.8%,うち造影US 8例),診断できていなかったものは7例(4.8%,うち造影US 4例)であった.7例のうち最も多かった最終診断は出血性直腸潰瘍(4例)で,いずれも内視鏡で診断された.USで緊急対応が必要と判断した症例は18例で,NOMIが5例と最多であった.この18例の領域合致率は72.2%で,18例のUS診断領域では消化管領域が10例(55.6%)と最も多かった.
【結語】
ICUにおけるPOCUSでは,検査前診断と検査後診断が異なることが少なくない.また消化管出血とくに直腸はPOCUSによる診断が困難なため,疑われる場合は内視鏡検査を検討すべきである.そして緊急対応が求められる疾患は消化管領域に多く,消化管領域については慎重な検索が必要である.