Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器横断領域1 腹部領域におけるPoint of care ultrasound ~minimum requirementは何か~

(S280)

周術期管理におけるPoint-of Care Ultrasound-腎機能評価への応用-

Point-of -Care Ultrasound for perioperative management: assesement of renal function

杉本 博行, 小寺 泰弘

Hiroyuki SUGIMOTO, Yasuhiro KODERA

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学

Department of Gastroenterological Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
超音波検査は腫瘍の存在,進展度診断,血管解剖の把握に重要であり,術中に用いることができる唯一の画像診断装置である.また術後合併症の早期診断においてもベッドサイドで行うことのできる有力な武器であり,当科では周術期管理において超音波検査を積極的に活用してきた.近年ではpoint-of-care ultrasonography(以下POCUS)の概念が提唱され,当科でも周術期管理へ応用し,昨年の本学会でその有用性について報告した.今回,周術期管理のうち腎機能評価への応用につき検討したので報告する.
【方法】
2014年1月から2015年7月までに当科で施行した肝切除症例のうち,周術期腎血流解析を施行した33症例を対象とした.
使用機種はGE社製,LOGIQ E9.対象は肝切除術後症例で,POCUS評価日は術前,術後1,3,7病日を基本とし,異常が検出された場合には適宜追加し施行した.腎機能評価の指標として腎内動脈血流波形を用い,腎内動脈最高血流速(RAPSV),腎内動脈pulsatility index(RAPI)を計測した.
【成績】
術前RAPSVは36.3±10.7cm/s,術前RAPIは1.10±0.31であった.Cr,BUNとの関連をみると術前RAPSVとの相関は認められなかったが,術前RAPIはいずれも良い相関を示した(r=0732,p<0.0001).術前RAPI≧1.4をpreRAPI高値群(n=4),術前RAPI<1.4をpreRAPI低値群(n=29)とすると,術前Cr値はpreRAPI高値群で有意に高値であった(1.16±0.26 vs.0.69±0.18,p<0.0001).
同様に第1病日RAPI高値群(n=6)において有意に第一病日Cr値が高値であった(1.29±0.47 vs. 0.84±0.30,p=0.0055).第7病日RAPI高値群(n=5)も同様な結果となった(1.00±0.38 vs. 0.71±0.22,p=0.0265).
また術後Cr≧1となった症例(n=13)ではpreRAPIが有意に高値であった(1.26±0.39 vs. 0.99±0.18,p=0.0126).
【結論】
消化器外科周術期管理において腎機能評価は重要であり,尿量や血清Cr値,BUN値を簡便な指標として用いている.今回の検討ではRAPIは周術期を通してCr値とよく相関し,腎機能低下症例で高値を示した.腎血流解析,特にPIはこれまで移植腎の評価に用いられ,PI高値の場合は拒絶が疑われるとされていたが,一般の周術期腎機能評価としても有用である可能性が示唆された.腎血流解析はベッドサイドで繰り返し施行可能,かつその場で評価できることが重要であり,POCUSの概念とも一致し今後の発展が期待されるものと思われた.