Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器5 肝臓 肝腫瘍の造影超音波による鑑別診断~比較的まれな疾患も含めて~

(S277)

肝腺腫の造影超音波検査

The contrast enhanced ultrasonography of a hepatic adenoma

三浦 隆生, 小川 眞広, 渡邊 幸信, 中河原 浩史, 森山 光彦, 碓井 ひろみ, 石毛 美香, 杉谷 雅彦, 長沼 裕子, 石田 秀明

Takao MIURA, Masahiro OGAWA, Yukinobu WATANABE, Hiroshi NAKAGAWARA, Mitsuhiko MORIYAMA, Hiromi USUI, Mika ISHIGE, Masahiko SUGITANI, Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA

1日本大学病院消化器内科, 2日本大学病院小児科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4横手市民病院消化器内科, 5日本大学医学部附属板橋病院病理学教室

1Gastroenterology, Nihon University hospital, 2Pediatrics, Nihon University hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 5Department of Pathology, Nihon university school of medicine

キーワード :

【はじめに】
肝細胞腺腫(hepatocellular adenoma:以下HCA)は,2010年の新WHO分類により,肝細胞腺腫の分子病理学的性格を反映した免疫組織化学的診断法が導入されるようになり,①Hepatocyte nuclear factor 1α(HNF1α)不活化型(H-HCA),②β-catenin活性化型(b-HCA),③InflammatoryHCA(I-HCA),④分類不能型(u-HCA)の4型に分類されるようになった.しかし,これらは病理組織による組織所見のほか免疫組織学的,遺伝子型の検討が必要となるため切除症例における最終診断の手法といえる.比較的症例数の少ない良性腫瘍の場合,切除症例が少ないと共に同じ条件下での検査が施行される事が少ないと考える.そこで以前より肝腺腫の合併することが知られている肝型および全身型糖原病のうち成人症例が多い糖原病Ia型(Glycogen Storage Disease Type Ia;以下,GSDIaと略記)症例に伴う肝腺腫と総合画像診断で診断された結節性病変に対し造影超音波検査を施行し肝腺腫の造影超音波検査の特徴を検討したので報告をする.
【方法】
対象はGSDⅠa型で当院外来加療中に定期的に超音波検査を含めた画像診断を施行し,同時に造影超音波検査を施行した症例である.組織学的検査が施行されていない症例については,造影CT,造影MRI(EOB-MRI,SPIO-MRI)で肝血管腫,肝癌,転移性肝癌,肝内などの除外診断がなされ組織検査が施行できていない症例に関しては2年以上の変化がない結節とした.使用装置:GEヘルスケア社製LOGIQL7,S8,E9,使用探触子:3.5Cs,4 C,C1-5コンベックスプローブ,9L,リニア型プローブ,造影超音波検査:ソナゾイド注射用16μL0.5ml/bodyの急速静注で施行.血管相で腫瘍濃染の有無および腫瘍血管につき評価を行い,後血管相で欠損像の有無の検討を行った.
【結果】
対象症例は全例女性で年齢は22歳~58歳である.経過観察年数は最長で20年で,対象症例中2症例3結節切除症例があり,2結節が肝腺腫,1結節が肝細胞癌症例であった.B- modeは低エコー,高エコー,高低エコーの混在するものと一定の傾向は認めなかった.対象症例の平均腫瘍径は23mm(7~35mm)である.7症例中2症例に腎障害症例が含まれていた.他の経過観察中の結節においては動脈相で淡い腫瘍濃染像を認めるのみで以後周囲と同等となり後血管相においても欠損像は呈さなかった.腫瘍内の動脈は屈曲蛇行する不整血管はほとんど認めなかった.
【考察】
肝腺腫の合併が多い糖原病において今回検討したGSDI a症例においては成人症例も多く,今回の検討においても肝細胞癌症例,腫瘍増大による切除症例が各1例含まれていた.本症例では慢性腎不全を合併している症例も多く,腎に負担をかけない造影超音波検査は有用であると考えられた.肝腺腫の特徴として肝癌ほど強くない腫瘍濃染像と悪性を示唆する腫瘍内の血管の侵食像を認めないことが特徴であり肝細胞腺腫の治療適応となる腫瘍内出血が出現する場合に内部エコーの複雑化と造影超音波検査での非造影部分が出現する事が特徴であり肝癌との鑑別が困難となる症例もあったが,鑑別は周囲への浸潤所見がないことと後血管相の腫瘍内の造影剤の残存が特徴であると考えられた.本疾患においても定期的な超音波検査により早期診断や治療適応の判定が可能になることが示唆された.