Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器5 肝臓 肝腫瘍の造影超音波による鑑別診断~比較的まれな疾患も含めて~

(S276)

肝転移診断におけるソナゾイド造影超音波の意義-組織所見を根拠とした後ろ向き研究

Histology-based assessment of Sonazoid-enhanced ultrasonography for diagnosis of liver metastasis

小林 和史, 丸山 紀史, 清野 宗一郎, 横須賀 收, 大塚 将之, 山口 匡

Kazufumi KOBAYASHI, Hitoshi MARUYAMA, Soichiro KIYONO, Osamu YOKOSUKA, Masayuki OHTSUKA, Tadashi YAMAGUCHI

1千葉大学大学院医学研究院消化器・腎臓内科学, 2千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学, 3千葉大学フロンティア医工学センター

1Department of Gastroenterology and Nephrology, Chiba University Graduate School of Medicine, 2Department of General Surgery, Chiba University Graduate School of Medicine, 3Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
遠隔転移の評価は,癌患者の診療方針の決定に極めて重要である.しかし,画像診断技術の進歩した現在においても転移巣の診断は必ずしも容易ではない.今回我々は,造影CTで肝転移が強く疑われた症例を対象に,病巣部の組織所見をスタンダードとして,転移巣の診断能ならびに当該患者の診療方針決定に対するソナゾイド造影超音波(S-US)の意義について検討した(IRB承認後ろ向き研究).
【方法】
対象は当院の悪性腫瘍患者(肝外原発,2011年4月-2015年10月)で,CTにより肝転移の存在が強く疑われ,術前精査としてのS-USと術前後に腫瘤部の組織検査(生検あるいは手術)が施行された98例(66.4±11.2才;男性62名,女性36名)である.転移疑い病巣は計148結節で,腫瘍径は4.7-109.2mm(平均20.4mm)であった.S-USでは,東芝メディカルシステムズ社のAplio XGあるいはAplio 500と,3.75MHzのコンベックスプローブを使用した.Focusは腫瘍の最深部,あるいはB-modeで認識困難な結節の場合は描出される肝臓の最深部に合わせた.ゲインは至適に設定し,造影時のmechanical indexは0.17-0.27(中央値0.19)であった.ソナゾイド(0.0075ml/kg)を末梢静脈より注入して早期相と後血管相を撮像し,既報[Claudon M, et al. UMB 2013]に従って病巣部の診断を行った.
【成績】
1.病巣部の検出
137結節は非造影B-modeで検出可能であったが,残りの11結節は非造影下で認識困難であった.後者(7.7±3.0mm)は前者(21.4±16.8mm, p<0.0001)に比べて有意に腫瘍径が小さかったが,それらを含めた全結節が造影後には同定可能であった.またS-USでは,CTで認識されなかった19結節が新たに検出された.その中で,14結節は悪性病巣(転移13,肝細胞癌1)で,他の5結節は血管腫1,限局性脂肪沈着3,正常肝組織1であった.
2.診断能の検討
S-USでは130結節が転移と診断され,18結節が非転移と考えられた.組織学的には,121結節(78症例)が転移と診断され,他の27結節が非転移巣であった(23症例;肝細胞癌2,肝内胆管癌2,血管腫3,その他良性20).転移巣に対するS-USの診断能は感度95%(115/121),陽性的中率88.5%(115/130),正診率85.8%(127/148)であった.S-USとCTの双方で同定された129結節における検討では,両者の陽性的中率に有意差を認めなかった(S-US 90.4%,CT 83.7%;p=0.128).またS-USの結果によって治療方針が変更となった例は8例(8.2%)に認められた.その7例では切除範囲の拡大,そして他の1例では,追加転移巣が検出されたため手術から化学療法へ変更となった.
3.診断能に関与する臨床因子の検討
BMI 22.0kg/m2(中央値)を基準として2群に分けて正診率を比較すると,BMI≧22.0kg/m2群77.5%,BMI<22.0kg/m2群94.7%と有意差(p=0.002)を認めた.また腫瘍深度(最深部)10cmを基準として2群に分けると,同様に正診率に有意差を認めた(深度<10cm群88.0%,深度≧10cm群66.7%;p=0.041).一方,腫瘍径に関して,中央値15.4mmで2群に分け比較を行ったが正診率に有意差を認めなかった(腫瘍径≦15.4mm群82.4%,腫瘍径>15.4mm群89.2%;p=0.241).このように肝転移巣に対するS-USの診断能は体型や腫瘍深度に左右されるが腫瘍径による影響は少ないものと考えられた.
【結語】
S-USは肝転移の診断に優れ,CT施行済の癌患者においても付加すべき検査である.なお,S-US以外の画像診断非施行下での診療の是非については今後の課題である.