Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器4 消化管 小腸疾患の超音波診断

(S274)

小腸腫瘍における体外式超音波検査の有用性

Usefulness of Ultrasonography for Diagnosis of Small Bowel Tumors

眞部 紀明, 畠 二郎, 河合 良介, 今村 祐志, 楠 裕明, 春間 賢

Noriaki MANABE, Jiro HATA, Ryosuke KAWAI, Hiroshi IMAMURA, Hiroaki KUSUNOKI, Ken HARUMA

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学総合臨床医学, 3川崎医科大学総合医療センター総合内科学2

1Division of Endoscopy and Ultrasonography, Kawasaki Medical School, 2Department of Health Care Medicine, Kawasaki Medical School, 3Department of General Internal Medicine 2, Kawasaki Medical School General Medical Center

キーワード :

【背景】
近年のカプセル内視鏡(CE)やバルーン内視鏡(BAE)の開発に伴い,小腸疾患の診断能が飛躍的に向上しているが,いずれも一長一短があり頻用されているとは言い難い.非侵襲的,低コストで繰り返し検査可能な体外式超音波検査(US)は,機器性能の進歩も伴い,各種消化管疾患の診断に応用されている.
【目的】
USの小腸腫瘍の検出率とそれに影響する因子を明らかにする.
【対象および方法】
小腸腫瘍が疑われCEおよびBAEに先行してUSを施行した558例(男性295例,女性263例,平均年齢71.1歳)を対象とし,小腸腫瘍のUS診断能とそれに影響する因子について,後ろ向きに検討した.
【結果】
対象症例における検査動機の内訳は,原因不明の消化管出血が373例(66.8%),腹痛が75例(13.4%),貧血が46例(8.2%),腸閉塞の精査目的が41(7.3%),その他が44例(7.8%)であった(重複あり).全対象患者中,CEまたはBAEで観察し得た小腸腫瘍は97病変[(良性腫瘍52病変,悪性腫瘍45病変)であった.小腸腫瘍に対するUS診断の感度は52.6%(51病変/97病変),特異度100%(461病変/461病変),陽性的中率100%(51病変/51病変),陰性的中率90.9%(461病変/501病変)であった.さらに,腫瘍径を20mm以上の症例に限定するとUS検出率は91.7%であった(粘膜下腫瘍85.7%,潰瘍病変を伴った腫瘍96.9%)(表1).次にUS診断に影響する因子について検討したところ,US描出可能病変の平均腫瘍径は33.2mmと不能病変の8.7mmと比較して有意に小さかった.また,描出可能病変の70.6%は終末回腸に位置していたが,不能病変のそれは29.4%と,両群間の占拠部位に優位差が認められた.また,USで描出できなかった46病変のうち42病変(91.3%)は良性腫瘍であり,その予後は良好であった.
【結論】
腫瘍径が20mm以上の小腸腫瘍のUS検出能は良好であった.また,US検出率に影響する因子には,腫瘍径のほかに腫瘍の局在が挙げられた.US描出不能病変の91.3%は良性腫瘍であることも考慮すると,小腸腫瘍診断のfirst lineとしてUSは有用であり,特に狭窄等,内視鏡施行困難例に対しては,代替検査になり得ると考えられた.