Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器4 消化管 小腸疾患の超音波診断

(S272)

内視鏡所見との対比からみたクローン病終末回腸病変における超音波検査の臨床的有用性

Clinical Usefulness of Transabdominal Ultrasonography in Contradistinction to Endoscopic Findings in the Terminal Ileum Lesions of Crohn’s Disease

島崎 洋, 丹伊田 卓, 北口 一也, 石本 博基, 松本 和久, 杉山 浩平, 宮川 麻希, 那須野 正尚, 田中 浩紀, 本谷 聡

Hiroshi SHIMAZAKI, Suguru NIIDA, Kazuya KITAGUCHI, Hiroki ISHIMOTO, Kazuhisa MATSUMOTO, Kouhei SUGIYAMA, Maki MIYAKAWA, Masanao NASUNO, Hiroki TANAKA, Satoshi MOTOYA

1JA北海道厚生連遠軽厚生病院医療技術部放射線技術科, 2JA北海道厚生連札幌厚生病院医療技術部放射線技術科, 3JA北海道厚生連札幌厚生病院IBDセンター

1Department of Radiological Technology, Hokkaido P.W.F.A.C. Engaru-Kosei General Hospital, 2Department of Radiological Technology, Sapporo Kosei Hospital, 3IBDcenter, Sapporo Kosei Hospital

キーワード :

【目的】
クローン病は若年発症することが多く,多彩な症状や合併症を呈し,再燃と寛解を反復しやすいことから,その画像診断においては低侵襲,低コストで繰り返し検査が可能な手法が必要とされている.簡便で非侵襲である体外式超音波検査の消化管疾患に対する有用性は周知のとおりであるものの,本邦においてはクローン病小腸病変に対する体外式超音波検査の有用性についての多数例における報告は少ない.今回,我々はクローン病患者の終末回腸病変に対して,体外式超音波(以下US)と下部消化管内視鏡検査(以下CS)を対比し,USの病変検出能について検討した.
【方法】
2013年4月から2016年6月の間に,USによる消化管観察が行われ,かつその後7日以内(中央値2日)にCSが施行され,終末回腸の観察が可能であったクローン病患者99例を対象とした.終末回腸に限定してUSにて壁厚(3mm以上を異常),層構造の不明瞭化・消失の有無を評価し,いずれかを認めた場合を「US所見あり」と定義した.また,CSにおいてびらん・アフタ,潰瘍を認めた場合を「CS所見あり」と定義した.CS所見の有無における壁厚の平均値を比較し,さらにCS所見を「びらん・アフタ」,「潰瘍」に分類した際の壁厚も比較検討した.また,CS所見の有無に対するUSの感度・特異度・陽性反応的中率・陰性反応的中率を検討した.使用機器は東芝社製Aplio400/500,日立アロカ社製Ascendusを用い,終末回腸の評価には高周波リニアプローブを使用した.USの前処置は検査当日から絶飲食とし,下剤や経口腸管洗浄剤は用いていない.
【結果】
平均年齢28.9歳,男性76例・女性23例であり,罹病期間の中央値は365日,病型は大腸型6例,小腸大腸型72例,小腸型21例であった.USによる壁厚の平均値は4.9±1.8mmであり,「CS所見あり」群における壁厚の平均値は5.3±1.7mm,「CS所見なし」群では2.9±0.8mmと,両者間に有意差を認めた(P<0.01).さらに「CS所見あり」群においてびらん・アフタでは4.8±1.5mm,潰瘍では5.5±1.8mmと有意差を認めないものの(p=0.129),潰瘍においてより壁が厚くなる傾向を認めた.
USにおける壁厚3mm以上を「US所見あり」とした場合のUSの感度は91%(75/82例),特異度は76%(13/17例)であり,陽性反応的中率95%(75/79例),陰性反応的中率65%(13/20例)であった.層構造の検討では,壁厚3mm未満の「US所見なし」群は全例(20例)層構造が明瞭であったのに対し,壁厚3mm以上の「US所見あり」群(79例)では層構造明瞭が36例,不明瞭32例,消失11例であった.消失の11例は全例CSでは潰瘍であった.
【結語】
クローン病の終末回腸病変に対するUSの病変検出能は,感度91%と良好であった.非侵襲で被ばくがなく安全に繰り返し施行することができるUSは,クローン病の終末回腸病変の拾い上げに有用である可能性が示唆された.