Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器3 胆道 胆道疾患に対する超音波診断

(S270)

胆管疾患の診断における電子ラジアル型超音波内視鏡の有用性

Value and recent advances in Electrical-radial type Echoendoscopy (ER-EUS) for the diagnosis of bile duct diseases

長川 達哉

Tatsuya NAGAKAWA

JA北海道厚生連札幌厚生病院第2消化器内科

Second Department of Gastroenterology, JA Hokkaido Koseiren Sapporo Kosei Hospital

キーワード :

【背景】
電子ラジアル型超音波内視鏡(以下ER-EUS)は2002年に臨床応用されて以来,観測装置のフルデジタル化(S/N比の向上による画質改善),多機能化(3D-image,Real-time tissue Elastographyの導入),内視鏡機器の改良(360°走査可能な探触子配列)などの技術導入が継続的に行われ,次世代超音波内視鏡システムとして長足の進歩を遂げている.今回は胆管疾患の診断におけるER-EUSの有用性を以下の2項目につき検討した.
【対象および方法】
2008年4月から2016年3月までの約8年間にスクリーニングあるいは精査目的にてER-EUSを施行した胆管疾患40例.なお使用機種はPentax社製EG-3630URKおよびOlympus社製GF-UE260(内視鏡機器,最大走査角度は共に360°),Hitachi-medico社製EUB-8500,EUB-7500およびOlympus社製EU-ME2 PREMIER PLUS(観測装置)である.全例,内視鏡を十二指腸下行脚まで挿入し,Stretch positionおよびPush positionにて口側へ引き戻しながらバルーン法にて肝外胆管をB-mode観察し,腫瘤性病変が描出された場合にはCDI(PDI)やReal-time tissue Elastographyによる観察,および超音波造影剤Sonazoidを静脈内投与し造影像の観察を追加した.
【検討項目1:胆管疾患の質的診断における有用性】
MR膵胆管撮影(以下MRCP)あるいは内視鏡的逆行性膵胆管造影(以下ERCP)の画像と対比可能な36例を対象とした.MRCPあるいはERCPを先に施行した26例中,ER-EUSにて新たに発見された異常所見は6例(小結石(胆砂含む)4例,胆管癌1例,乳頭部癌1例)であった.また従来からのメカニカルラジアル型超音波内視鏡(以下MR-EUS)を同時に施行した16例中,画像の判定ではER-EUS画像がMR-EUS画像より優れていた症例が63%(10/16),同等とされた症例が25%(4/16)であった(他の2例はMR-EUSの操作性により病変評価が困難であった).画質の向上の理由としては振動子近傍に見られる多重エコーの軽減(9/16,56%)と空間分解能の向上(10/16,63%)が挙げられた.
【検討項目2:胆管腫瘍性病変の診断における有用性】
ER-EUSを施行した胆管腫瘍性病変26例を対象とした.平均腫瘍最大径は21mm(5~34mm)であった.鑑別診断の検討ではMR-EUSを同時に施行した14例中10例(71%)において病変の境界や辺縁の明瞭化など画像の改善により質的診断が容易となった.またCDI/PDIの併用により,26例中23例(88%)に血流信号が表示され,Sonazoid静脈内注入による造影後は24例(92%)において周囲膵実質や血管系とのコントラストが鮮明となった.一般的な傾向として内腔発育が主体の乳頭膨張型腫瘍ではCDI/PDIにて腫瘍内部に豊富な線状~樹枝状の血流信号を認め,造影にて胆管壁よりも均一にenhanceされるhypervascular tumorとして認識された.一方,壁内外への浸潤性発育が主体の結節浸潤型(平坦浸潤型)腫瘍ではCDI/PDIにて腫瘍内部に点状の血流信号が散在して認められるものの,造影では胆管壁よりもBubbleの流入に乏しいか,不均一にenhanceされるhypovascular tumorとして認識された.
【結語】
ER-EUSは従来からのMR-EUSと比べartifactの低減と空間分解能の向上により良好なB-mode画像が得られ,胆管疾患の質的診断に有用であった.またMRCP, ERCPなど胆管内腔を評価する他のDiagnostic modalityでは観察の死角となりやすい小結石や腫瘍性病変を高率に指摘し得ると共に,血流動態診断を付加することにより同時に腫瘍の性状も含めた鑑別診断も可能となり,今後の胆管疾患診断の精度向上に寄与するものと考えられた.