Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器3 胆道 胆道疾患に対する超音波診断

(S270)

肝門部胆管壁構造に着目した腹部超音波検査によるIgG4関連胆管炎診断の試み

Diagnostic trial of the IgG4-related cholangitis by the abdominal ultrasonography

小堀 郁博, 須田 季晋, 大川 修, 徳富 治彦, 北川 智之, 片山 裕視, 玉野 正也

Ikuhiro KOBORI, Toshikuni SUDA, Osamu OKAWA, Naohiko TOKUTOMI, Tomoyuki KITAGAWA, Yasumi KATAYAMA, Masaya TAMANO

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
腹部超音波検査は簡便かつ非侵襲的な検査として肝胆道疾患の診断に不可欠であり,初診時にCT検査やMRI検査に先駆けて行われるべき画像検査である.硬化性胆管炎の体外式超音波検査の所見としては,1982年にCarrollらが報告した肝門部胆管壁の肥厚が重要とされるが,その後の詳細な検討は認めない.一方,IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)の診断には胆管の管腔内超音波(IDUS)による胆管壁の肥厚所見が重要とされる.今回は体外式腹部超音波検査による肝門部の胆管壁構造に着目してIgG4-SCの診断を試みた.
【対象と方法】
2013年4月から2014年3月までに当科で腹部超音波検査を施行した4144例を対象とした.肝門部胆管壁に肥厚を認めたものを拾い上げ,最終診断と比較した.IgG4-SCと診断された症例については治療後の所見も検討した.
【結果】
肝門部胆管壁に肥厚を認めたものは4144例中9例であった.これらの最終診断は,原発性硬化性胆管炎(PSC)4例,IgG4-SC 3例,肝門部胆管癌1例,自己免疫性肝炎1例であった.PSC例の胆管壁は均一な線状高エコーの肥厚像を呈したのに対し,IgG4SCの3例はいずれも高エコー,低エコー,高エコーの3層構造を有し,狭窄部位に向かって先細り状を呈していた.肝門部胆管癌は1例のみだが均一な高エコーでPSCに比して壁肥厚の不均一性が目立った.自己免疫性肝炎の1例は化膿性胆管炎を繰り返しており,PSC類似の所見であった.IgG4-SCの3例にはプレドニゾロンによる治療が行われ,治療後の超音波検査では全例で胆管壁の3層構造を伴う肥厚と先細り所見は改善を認めた.
【考察】
腹部超音波検査による肝門部の胆管壁肥厚に着目することにより,硬化性胆管炎の拾い上げと肝門部に病変を有するIgG4-SCの診断が可能であると思われた.IgG4-SC症例では胆管壁の3層構造と狭窄部の先細り状所見を描出することが可能であり,これはIDUSで重要視されているcircular-symmetric所見(胆管の輪切り所見)を胆管の縦切り方向から観察しているものと考えられた.また,これらの所見はIgG4-SCの診断のみならず,治療効果判定にも有用であると思われた.
【結論】
肝門部胆管壁構造に着目することにより,腹部超音波検査によってIgG4-SCの一部の診断は可能であると思われた.