Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器3 胆道 胆道疾患に対する超音波診断

(S268)

病巣深部低エコーは,漿膜下層浸潤胆嚢癌を示す

Gallbladder tumors with a deep hypoechoic area suggest pT2 carcinoma

藤本 武利, 加藤 洋

Taketoshi FUJIMOTO, Yo KATO

1平塚胃腸病院外科, 2獨協医科大学日光医療センター病理部

1Department of Surgery, Hiratsuka Gastroenterological Hospital, 2Department of Pathology, Nikko Medical Center, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
従来,外側高エコー層に著変のない胆嚢癌は,US/EUS上の胆嚢壁層構造より粘膜癌・固有筋層浸潤(MP)癌・漿膜下層浸潤(SS)癌のどれも考えやすく,これらの鑑別は困難とされてきた.しかし,前2者の早期癌と後1者の進行癌との鑑別は,両者に対する至適治療法が異なるので,重要である.このため,隆起型・表面隆起型・乳頭浸潤型・平坦浸潤型の肉眼型4型の胆嚢癌に関してUS像を検討し,両者の鑑別点が何かを明らかにする.
【対象と方法】
2mm以下のSSに留まるSS胆嚢癌は予後良好と報告されており(Wakai Tら,2003年),これを初期SS癌とした時,1988年~2016年までの29年間に平塚胃腸病院で腹部超音波検査(US)を行った胆嚢癌切除例のうち,早期癌3例と初期SS癌7例を対象として,超音波像・病理を対比検討した.
【結果と考察】
外側高エコー層は漿膜下深部脂肪層+漿膜に相当する.病巣表層部が高エコーで深部が低エコーを示す所見(病巣深部低エコー)は,病理組織学的に表層部が乳頭腺癌で深部に豊富な線維化とリンパ球浸潤を伴う癌巣を示し,初期SS癌7例のすべてに認められたが,早期癌3例でみられなかった.外側高エコー層の性状に関しては,吊り上げ肥厚が早期癌(MP)1例・初期SS癌4例で認められ,著変なしが早期癌2例・初期SS癌3例であった.これより胆嚢癌の垂直進展様式を考察してシェーマにまとめると図のようになる.点線は固有筋層の位置を示す.癌浸潤が深くなるにしたがい外側高エコー層が一旦内腔側に吊り上げられて肥厚し,漿膜下層への癌浸潤に伴い病巣深部低エコーが出現する.さらに癌巣が拡大すると深部低エコーが増大し,外側高エコー層が菲薄化していくと考える.ただし,平坦浸潤型は外側高エコー層の肥厚を経ずにAから直接Dへと進む.すなわち,外側高エコー層に著変がないまま病巣深部低エコーが出現し,外側高エコー層の不整・菲薄化を示す.
【結論】
外側高エコー層は,乳頭浸潤型・平坦浸潤型の初期SS癌でそれぞれ吊り上げ肥厚・著変なしを示すが,両者とも病巣深部低エコーを認めるのが早期癌と進行癌の鑑別点である.病巣深部低エコーはSS癌を示す.