Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器3 胆道 胆道疾患に対する超音波診断

(S268)

胆嚢疾患に対する超音波所見で有用な所見とは何か?

What is the best finding of Ultrasonography in the diagnosis of gallbladder diseases?

金森 明, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 多田 俊史, 川地 俊明, 橋ノ口 信一, 石川 照芳, 片岡 咲, 市川 宏紀

Akira KANAMORI, Takashi KUMADA, Hidenori TOYOADA, Toshifumi TADA, Toshiaki KAWACHI, Shinichi HASHINOKUCHI, Teruyoshi ISHIKAWA, Saki KATAOKA, Hironori ICHIKAWA

1大垣市民病院消化器内科, 2大垣市民病院診療検査科形態診断室

1Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
体外式腹部超音波検査(US)は簡便で低侵襲であるため胆嚢病変においては良悪性疾患を問わず診断に欠かせない機器である.特に急性胆嚢炎が疑われる症例においては第一に行うべき検査とされている(推奨度1:急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2013).一方でその診断には胆嚢壁の性状,サイズ,胆嚢周囲のUS所見が以前より報告されている.機器の進歩に伴いさらに細かな所見の拾い上げやUSに特徴的な所見により胆嚢病変の診断のさらなる向上が期待される.今回我々は胆嚢壁肥厚を来たした病変を対象にUS所見の検討を行った.
【対象,方法】
単一施設での後方視的研究を行った.対象は2011年1月から2015年12月までに急性腹症で受診し,USにて胆嚢病変を疑い外科手術を施行した317例(男:女189: 128).年齢は中央値で66歳(20-92歳),病理結果によりA群155例(急性胆嚢炎)とB群162例(慢性胆嚢炎とその他疾患)の2群に分けた.各群において,超音波所見:胆嚢の短径(mm),壁の厚み(mm),Murphy’s sign,壁内部の低エコー帯の出現,fluidの有無,脂肪エコー濃度の上昇,周囲膿瘍の有無.血液学的検査:WBC,CRP,T-Bil,および身体学的所見:発熱,BMIの各因子について比較検討を行った.急性胆嚢炎の診断に寄与する因子は多重ロジステック回帰分析を用いて検討を行った.腹部超音波検診判定マニュアルを参照し胆嚢の短径は36mm≧,胆嚢壁は4mm≧を所見ありとした.血液学的および身体学的検査については各因子のROC曲線のcutoff値に基づき2値化して検討した.またUS所見を中心に診断に寄与する各因子でROC曲線を作成し,曲線下面積(AUC値)を評価した.統計ソフトはEZRを用い,P value<0.05を有意差ありと判定した.
【成績】
胆嚢の短径:中央値(範囲)はA群39.0mm(18-67mm):B群28.0mm(10-61mm)胆嚢壁厚:A群6mm(2-20mm)B群4mm(1-30mm)で両群に有意差を認めた.Murphy’s signはA群90/155例(58.1%)B群49/162(30.2%)にみられた.B群に胆嚢癌を4例認めた.急性胆嚢炎に対する診断に寄与する因子としてUS所見では1)胆嚢の短径(34mm≦),2)壁肥厚(5mm≦),3)壁内部の低エコー帯の出現が独立した因子であり.オッズ比:95%CIは各々,1)3.28(95%CI;1.77-6.10);P value= 0.0002,2)2.40(95%CI;1.27-4.51);P value= 0.0067,3)2.23(95%CI;1.19-4.17);P value= 0.0125であった.他の因子はWBC,CRP値であった.US所見の3つを組み合わせて作成したROC曲線はAUC値0.807(95%CI;0.76-0.854)と良好であった.WBCとCRPを組み合わせたROC曲線と比較しても同等の検出能であった(P value =0.209).
【結論】
USにおける胆嚢所見を検討した.従来の壁所見に加え胆嚢内部の低エコー帯の出現は急性胆嚢炎を示唆する有用な所見と考えられた.