Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器2 膵臓 膵疾患における造影超音波検査の有用性

(S264)

膵癌の超音波診断における造影超音波の有用性

Contrast-enhanced ultrasonography is indispensable for diagnosis of pancreatic cancer

今村 祐志, 畠 二郎, 眞部 紀明, 河合 良介, 中藤 流以, 高田 珠子, 竹之内 陽子, 谷口 真由美

Hiroshi IMAMURA, Jiro HATA, Noriaki MANABE, Ryousuke KAWAI, Rui NAKATOU, Tamako TAKATA, Yoko TAKENOUCHI, Mayumi TANIGUCHI

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学消化管内科学, 3三菱三原病院内科, 4川崎医科大学附属病院中央検査部

1Division of Endscopy and Ultrasound, Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical school, 2Gastroenterology, Kawasaki Medical School, 3Internal Medicine, Mitsubishi Mihara Hospital, 4Clinical Laboratory Department, Kawasaki Medical School Hospital

キーワード :

【背景】
膵癌は予後不良な癌のひとつであり,早期診断および正確な治療方針の決定が重要である.
体外式超音波検査はその非侵襲性からも本疾患のスクリーニングおよび診断における第一選択的形態学的検査法であるが,必ずしもその成績は良好とは言えない.特に膵管拡張などの随伴所見に乏しい小膵癌では癌と正常膵実質のコントラストが不良で,しばしば見落としの原因となっている.それに対し造影超音波による組織のperfusionを描出することは癌の検出に有用であると推測される.同時に治療方針の決定には腹腔動脈や上腸間膜動脈などへの浸潤や肝転移の有無を正確に判定する必要があるが,B-modeでは認識が困難な場合も多く,ここでも造影超音波の有用性が期待される.
【目的】
膵癌およびその肝転移の診断における造影超音波の有用性をretrospectiveに検討する.
【対象と方法】
2013年から2015年の3年間に超音波で膵癌と診断し,その後病理組織学的に確定診断された96例96病変を対象とし,そのうち57例に造影超音波を施行した.機器は東芝Aplio,プローブは3.5MHzコンベックスまたは7 MHzリニアプローブを使用,検者は超音波検査室所属の医師および技師.造影は医師が施行し,ソナゾイドを0.015ml / KgBWワンショット静注し,膵癌および肝全域を約10分間観察し,必要に応じて0.5mlを追加静注した.なお造影剤の使用に関しては本学倫理委員会の承認および本人の同意を得ている.
【結果】
造影を施行しなかった39例はB-modeとカラードプラあるいはSMI(Superb Microvascular Imaging)によりその診断が十分に可能であった.造影を施行した57例全例で腫瘍と正常膵実質のコントラストが明瞭となり,主要血管への浸潤もより正確に判定可能であった.癌の検出において特に造影超音波が有用であった症例は,副所見を伴わない小さな膵癌(平均12ミリ)3例,Bモードでは認識できなかった微小な肝転移2例であった.
【考察】
造影超音波により小膵癌や浸潤範囲がより正確に検出,判定できた理由としては今回経験した膵癌がすべてhypovascularであり,正常組織とのコントラストが明瞭になったことが最も大きな要因であり,また造影超音波の条件が通常のB-modeの条件に比較してダイナミックレンジが狭く,よりコントラストを強調するものであったことも影響していると思われる.肝転移巣の検出能向上に関してはクッパー細胞を有さない転移巣が染影欠損として明瞭に認識されたことが主因であり,特に肝被膜直下の小病変はB-modeでは体壁からの多重反射などにより検出が困難であったが,高周波プローブを用いた造影超音波により容易に検出可能であった.膵癌のQOLも含めた予後に対する造影超音波の効果は今後症例の蓄積とともに詳細な検討を必要とするが,膵癌の早期診断や正確なステージングに造影超音波が有用である可能性が示唆される結果であった.
【結語】
膵癌の超音波診断および治療方針決定において造影超音波は有用であり,特に小膵癌や小さな転移巣の検出には必須であると考えられた.