Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器横断領域1 腹部検診マニュアルの功罪

(S254)

腹部超音波検診判定マニュアル 導入における功罪

Merits and demerits of manual for abdominal ultrasound in cancer screening introduction

千葉 祐子

Yuko CHIBA

公益財団法人北海道労働保健管理協会臨床検査部

Clinical Laboratory Department, Hokkaido Industrial Health Management Fund

キーワード :

【はじめに】
当協会では2014年に「腹部超音波検診判定マニュアル」(以下判定マニュアル)を使用する以前に,日本消化器がん検診学会が作成した「腹部超音波がん検診基準」(以下基準)を2012年に導入した.基準と判定マニュアルの導入における功罪と,今後の課題についてまとめる.
【実績】
腹部超音波検査担当技師は28名で全員臨床検査技師である.基準を導入した2012年の腹部超音波検査受診数は14,283名精検率は5.4%,2013年は13,947名で同5.4%,判定マニュアルに切り替えた2014年の腹部超音波受診数は13,417名精検率は4.7%,2015年は14,147名で同4.5%となった.基準から判定マニュアルに移行し,精検率は基準導入以前と同程度に戻った.がん発見率は0.13%,0.08%,0.10%,0.06%で基準導入以前とほぼ変化がない.
【基準導入時の変化】
膵管径と胆管径の計測方法と描出の統一,描出不明瞭の統一,肝血管腫のサインをもう一度見直し統一化を図るなど行った.新たな取り組みであるカテゴリーを付ける行為が,技師間の均質化に繋がった.
【判定マニュアルでの変化】
判定マニュアルへの移行に伴い超音波画像所見の項目が増え,カテゴリー2へカテゴリーダウンする項目が増えたため,超音波画像所見を詳細に観察するための技術向上を図ることができた.また,基準の時代以上に「客観性があり説得力のある画像」を残すようになった.
【功罪と課題】
判定マニュアルは「実施基準」と「カテゴリーおよび判定区分」分かれている.「実施基準」は健診機関として精度管理を行う上での基本項目が明記されており,これらを網羅できれば事業場との契約時に効果を発揮する.しかし基準に満たない場合は,逆に足かせになってしまう.特に検査時間が明記されたことで,現場への負担が大きくなった.カテゴリーダウンのための詳細な観察は,以前よりも時間を要し,導入1年目は検査時間の遅延があった.現在は技術が上がり,遅延が短縮してきている.
現在の課題は判定マニュアルの判定区分と実際の超音波判定が一致していない点である.最終的には判定医の判断である以上,判定区分と完全に一致することは現状では困難である.判定区分については課題が残る.
【まとめ】
判定マニュアルの妥当性について十分な検証が行われていない以上,功罪について言明することはできない.しかし技術を向上させる効果はあると考えられ,腹部超音波検査の質の向上と均質化を謀る事は可能だと考えている.