Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器横断領域1 腹部検診マニュアルの功罪

(S253)

当院におけるカテゴリー導入を振り返って

Merits and demerits of an ultrasonic medical examination using this manual in this hospital

中河原 浩史, 小川 眞広, 熊川 まり子, 渡邊 幸信, 三浦 隆生, 松本 直樹, 塩田 淳朗, 後藤 伊織, 山本 義信, 森山 光彦

Hiroshi NAKAGAWARA, Masahiro OGAWA, Mariko KUMAGAWA, Yukinobu WATANABE, Takao MIURA, Naoki MATSUMOTO, Atsuo SHIOTA, Iori GOTOU, Yoshinobu YAMAMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA

日本大学病院消化器内科

Gastroenterological medicine, Nihon University Hospital

キーワード :

【はじめに】
2014年4月に日本超音波医学会,日本消化器がん検診学会,日本人間ドック学会の3学会共通で発表され3年が経過している.徐々に普及しつつあるといってもまだ周知徹底されているわけではない.我々の施設は2014年10月に病院移転と共に大学病院内の同一施設内に健診センターも抱えるようになった.これにより直接健診USの二重読影も含めた指導も行っており,健診施行側と精密検査を実施する側の両者の立場を同一の施設で行う施設となった.病院開院より腹部超音波検診判定マニュアルを取り込んだレポートシステムを導入しておりその,メリットとデメリットを検討したので報告をする.
【方法】
当院における健診の超音波検査の流れを示す.超音波検査は検査技師が担当し,あらかじめ同マニュアルの撮影断面を含んだ決められた25断面を同一の撮影順番で撮影を行う(①左腎,②脾臓,③脾臓越し膵尾部④腹部大動脈,⑤正中縦走査大動脈面,⑥正中縦走査下大静脈面,⑦正中縦走査膵頭部~鉤部,⑧正中横走査膵体部,⑨正中横走査拡大像膵管計測,⑩正中斜走査膵体尾部,⑪正中斜走査膵頭部,⑫右肋骨弓下走査胆嚢,⑬右肋骨弓下縦走査胆嚢,⑭右肋骨弓下斜走査肝外胆管,⑮右肋間走査胆嚢,⑯正中横~左肋骨弓下肝外側区,⑰正中横走査S4,⑱右肋骨弓下走査S5,⑲右肋骨弓下走査S6,7,⑳右肋骨弓下走査S8,右肋骨弓下走査IVC,右肋間走査S8,右肋間走査S5,右肋間走査S7,右肋間走査S6腎および肝腎コントラストとした.).基準断面の後に異常所見を撮影し,計測をする場合には計測のon/offの同じ両方の静止画,異常所見および専門医の意見を聞きたい所見については横走査の場合頭側から尾側,縦走査の場合には左から右への1方向のみの動画撮影を行う事を基準として最大枚数制限はもうけないこととした.検査終了後に電子カルテのレポートにカテゴリー判定と共に所見を入力し,その所見を同学会の認定専門医による二重読影がなされその結果を再度検査技師が確認している.これらの手法で検査を施行しており同一施設内のため要精査としての受診いつも高く約2年間を振り返り腹部検診マニュアルの長所と短所を検討したので報告をする
【結果】
まず,最大の不利益は所見レポートを作成する時間と費用の問題である.現在電子カルテ化がなされている中所見レポートの変更が容易にできなくなっているためシステムの変更が最大の難点であると考えられる.予見入力後の自動カテゴリー判定など工夫はしたが既存のシステムがないために常に修正などが必要であり手間がかかった.さらに被検者に対する告知病名も変化したことによる良性腫瘍に対する受診者の戸惑いもあった.また描出不良とされるカテゴリー0は,当センターでは,膵臓で0.4%であったが正式な定義もないため逐年健診になった場合の困惑があった.利点としては飛躍的な客観性の向上であり,二重読影のしやすさ逐年健診症例での画像比較のしやすさ,新しい技師に対する教育的効果などが挙げられた.
【考察】
超音波の弱点は客観性の欠如であり,これは撮影手法のみによるものではなく検査結果に対するものも含まれていた.要精査の割合の上昇は間接所見からの病変の拾い上げにも繋がるためもう少し長い目で見る必要があると考えられた.少なくとも健診マニュアルの導入により客観性が飛躍的に向上されたのは事実であり,さらに今後は学会が中心になり普及に努めると共に各企業と共同でレポートシステム導入に対する障害を低くする努力が必要であると考えられた.あまり細かな改訂は混乱を招くばかりとなるため学会などで良く議論を重ねた上での改訂をするべきであると思われた.