Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器横断領域1 腹部検診マニュアルの功罪

(S253)

腹部超音波検診マニュアルの功罪-当院人間ドック腹部超音波検診における検討-

Merits and demerits of the Manual for Abdominal Ultrasound in Cancer Screening and Health Checkups.

西村 重彦

Shigehiko NISHIMURA

住友病院外科

Department of Surgery, SUMITOMO HOSPITAL

キーワード :

【目的】
2014年4月腹部超音波検診判定マニュアルが公表され,腹部超音波検診施設でのマニュアルの導入と普及が期待されるところである.当院人間ドックでは2016年春からマニュアルを導入し判定している.今回,腹部超音波検診マニュアルの功罪についての考察を行うため,当院人間ドック腹部超音波検診における腹部超音波検診判定マニュアル導入後の状況について検討した.
【対象と方法】
①当院人間ドック腹部超音波検診を担当している検査担当者,判定医,精査側の消化器内科医を対象にマニュアル導入後の意識調査を行った.②マニュアルでは「膵描出不能」(カテゴリー0,事後指導D2)という項目に関連しカテゴリー0が増加するのではと懸念されてきたため,カテゴリー0の頻度を検討した.対象は2016年4月から12月に当院人間ドック腹部超音波検査を施行した7584例である.
【結果】
①腹部超音波検診マニュアル導入後の意識調査
a)検査担当者の意見:「自分の経験で判断することなく,共通の判定基準で判断できるため経験年数による超音波診断に差が少なくなった.」「注意してみるべきポイントがわかりやすい.」等
b)ドック判定医の意見:「共通の判定基準で判定でき,検診精度の均質化という面で有用である.」
c)消化器内科医の意見:「膵嚢胞や膵管拡張などの高危険群に対する意識の高まりから積極的な精査・フォローにつながった.」
②「膵描出不能」(カテゴリー0,事後指導D2)の頻度の検討
2016年4月から12月に当院人間ドック腹部超音波検査を施行した6594例中,「膵描出不能」(カテゴリー0,事後指導D2)と判定した症例は103例(1.56%)であり,描出不能以外の所見で要精査となった症例は185例(2.81%)であった.「膵描出不能」症例の平均BMIは25.8(全体平均BMI:23.2)と肥満症例が多かった.
【結語】
腹部超音波検診マニュアルを用いた検診はがん検診としての客観性の向上,検診精度の均質化という面で有用であると考えられた.一方,臓器描出不能(カテゴリー0,事後指導D2)項目から,要精査症例が増加することを十分認識しておく必要があると思われる.