Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 肝臓 肝線維化の評価法

(S250)

Fontan術後肝合併症(FALD)における非侵襲的肝硬度測定~評価に適切なモダリティは?~

Fontan-associated liver fibrosis: diagnosis by elastography

小泉 洋平, 廣岡 昌史, 今井 祐輔, 渡辺 崇夫, 吉田 理, 徳本 良雄, 畔元 信明, 古川 慎哉, 阿部 雅則, 日浅 陽一

Yohei KOIZUMI, Masashi HIROOKA, Yuusuke IMAI, Takao WATANABE, Osamu YOSHIDA, Yoshio TOKUMOTO, Nobuaki AZEMOTO, Shinnya FURUKAWA, Masanori ABE, Yoichi HIASA

1愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学, 2独立行政法人国立病院機構四国がんセンター消化器内科, 3愛媛大学大学院疫学・予防医学講座

1Department of Gastroenterology and Metabology, Ehime University Graduate School of Medicine, 2Department of Gastroenterology, National Hospital Organization Shikoku Cancer Center, 3Department of Epidemiology and Preventive Medicine, Ehime University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
Fontan術後肝合併症(FALD)は,Fontan術後の遠隔期に肝線維化の進展と肝細胞癌の発症をきたす事が知られている.近年,非侵襲的肝硬度測定としてElastographyの有用性が報告されている.FALD症例において超音波で肝硬度を測定する場合に,どの装置が有用か検討した報告は無い.
【目的】
FALD症例にいてReal-time Tissue Elastography(RTE),およびVibration Controlled Transient Elastography(VCTE),Shear wave Elastography(SWE)を施行し,どの測定方法が有用であるかを明らかにする.
【対象と方法】
2012年1月から2016年12月まで当科で肝硬度測定を施行したFontan術後患者35症例を対象とし,全例にRTE,VCTE,SWEを施行した.うち,同意の得られた症例に対して,腹腔鏡下肝生検を施行した.
【結果】
年齢の中央値は23歳,術後経過年数の中央値は15年であった.腹腔鏡下肝生検を施行した5例のうち3例は腹部超音波検査で肝の形態変化がみられ,肝硬変を示唆する所見であった.腹腔鏡で観察した肝の外観は3例が結節肝の状態であった.肝組織所見は3例に結節形成がみられ,2例は線維形成を認めるものの,結節形成には至っていなかった.全例,中心静脈周囲を中心とした線維形成であり,うっ血よる線維化進展に矛盾しない所見であった.結節肝3例のRTEを用いて測定した肝硬度値は,それぞれ3.84,3.47,4.02.VCTE値は24.5 kPa,21.4 kPa,27.2 kPa.SWE値は1.72 m/s,2.05 m/s,1.86 m/sであった.非結節肝2例は,RTE値がそれぞれ2.42,2.36.VCTE値は19.5 kPa,22.6 kPa.SWE値は1.95m/s,1.83 m/sであった.また,全症例のRTEの中央値は3.02,VCTEの中央値は19.2 kPa,SWEの中央値は1.78 m/sであった.術後経過15年未満(n=12)と,15年以上(n=23)の2群に分けて肝硬度値を比較したところ,RTE値は15年以上の群で有意に高かった(P<0.01)が,VCTEとSWEは両群間に有意差がみられなかった.腹部超音波所見では,全35例中,肝硬変の所見が見られたのは21例(60%)であった.
【結論】
Fontan術後症例では,術後経過により肝線維化が進展するため,その肝硬度評価を無侵襲で施行できるElastographyは有用な画像検査である.FALD症例はうっ血肝を背景としておりSWEやVCTEよりも,うっ血の影響を受けないRTEが有用と考える.