Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 肝臓 肝線維化の評価法

(S250)

GE社製超音波装置を用いたNASHの線維化診断の有用性

Usefulness of S-Map, SWE and At-PI in evaluating the degree of liver fibrosis in NASH

荻野 悠, 和久井 紀貴, 住野 泰清

Yu OGINO, Noritaka WAKUI, Yasukiyo SUMINO

東邦大学医療センター大森病院消化器内科

Division of Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

現在,慢性肝疾患の線維化診断に対する非侵襲的な測定法として超音波(US)を用いた肝硬度を画像化・数値化する様々な手法が開発され応用されている.GE社製US装置にも2012年12月から主に心拍動を利用したstrain elastography(S-Map)が搭載された.その後2014年12月からShear wave Elastography(SWE)が製品化され,また造影剤を用いた肝病期進展度診断ツールとしてarrival time parametric imaging(At-PI)が開発され2015年11月に搭載された.
【目的】
今回,NASHの線維化診断におけるS-Map,SEW,At-PIの有用性を明らかにする.
【方法】
対象は約2年間で肝生検と同時期にS-Map,SEW,At-PIを施行し得たNAFLD 119例.超音波検査はGE社製LOGIQ E9 XD clearとC1-6プローブを使用した.1)S-Mapの測定法:右肋間走査から心拍の検出する断面で肝表から5cmのところにROIをおき,ひずみ画像を取得.心拍動により最もひずみが生じたフレームを代表フレームとした.代表フレームから算出されるstrain indexを計6回測定し,その平均を求めた後,ROIから心臓までの距離を測定し,strain indexの平均との積を算出した.2)SWEの測定法:右肋間からプローブを肋間に垂直に当てROIを肝表から垂直に1-2cmの深さに設定し測定を開始.計6回測定を行い,その中央値(m/s)を算出した.3)At-PIの測定法:推奨量のSonazoidを静注し肝S5-6領域と右腎臓の染影動態を40秒間動画で記録した.記録した動画から,右腎染影開始を0基点とした肝全体のarrival timeの平均値を算出した.超音波検査後,肝生検で得られたFibrosis stageとS-Map,SEW,At-PIで得られた結果を比較し,その差異について検討した.またROC曲線を描き,S-Map,SEW,At-PIによる線維化診断能について検討した.なお肋間が狭い等で肝臓の描出が困難な症例,心疾患と有腹水症例は対象から除外した.本研究は院内倫理委員会の承認と患者の同意を得て行った.
【成績】
肝生検の結果,stage0は28例,stage1は52例,stage2は15例,stage3は9例,stage4は15例であった.S-Map:stage0-1 VS 2以上の診断能はAUROC 0.80,stage4以上のAUROCは0.95,SWE:stage0-1 VS 2以上のAUROCは0.91,stage4以上のAUROCは0.90,At-PI:stage0-1 VS 2以上のAUROCは0.58,stage4以上のAUROCは0.58であった.またAt-PIにかぎり脂肪化軽度症例のみを対象とし,再検討を行ったところstage4以上のAUROCは0.72と診断能の改善を認めた.
【考案】
検討の結果から,S-Mapと比べSEWはstage2以上の診断能が良好であった.stage4の診断能はS-Map,SEWともに良好であった.一方,At-PIの診断能は低い結果であったが,中等度脂肪肝以下の症例のみでの検討では良好な結果であった.
【結語】
NASHにおけるS-Map,SEWを用いた超音波解析は,その線維化診断に利用できる可能性がある.