熊川 まり子, 松本 直樹, 渡邊 幸信, 平山 みどり, 三浦 隆生, 中河原 浩史, 小川 眞広, 森山 光彦, 近藤 亮祐, 小泉 憲裕

Mariko KUMAGAWA, Naoki MATSUMOTO, Yukinobu WATANABE, Midori HIRAYAMA, Takao MIURA, Hiroshi NAKAGAWARA, Masahiro OGAWA, Mitsuhiko MORIYAMA, Ryosuke KONDO, Norihiro KOIZUMI

¹日本大学医学部消化器肝臓内科, ²電気通信大学大学院情報理工学研究機械知能システム工学専攻

¹Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Medicine, Nihon Univercity School of Medicine, ²Department of Mechanical Engineering and Intelligent Systems, The University of Electro-Communications

キーワード :

【目的】
びまん性肝疾患の画像解析による組織性状診断には，以前よりテクスチャ解析が使用されている．しかしながら，テクスチャ解析を応用した技術では肝線維化診断の精度が高いとはいえない．また，解析の対象となる関心領域（Region of Interest: ROI）の選択方法も，解析結果を左右する．今回，分割併合法という手法でROIを自動設定し，同時生起行列を用いたテクスチャ解析によって，慢性C型肝炎における線維化を評価しうるか検討した．
【方法】
対象は2014年8月から2016年10月までに当院で肝切除または肝生検を施行し，その病理所見内に肝線維化の程度が明記された慢性C型肝炎あるいは肝硬変の49名．年齢は67歳（35-81歳）．男性39例，女性10例．新犬山分類はF0/1/2/3/4がそれぞれ2/5/11/12/19例であった．術前または生検前にリニアプローブを用いて，depthを6cmに設定し，右肋間から肝右葉を撮影した．使用装置はLOGIQ S8（GEヘルスケアジャパン）．同時にFibroscan（echosens）を用いて，肝硬度を評価した．撮影した画像は，分割併合法という手法を用いて肝内の血管や多重反射などの領域と肝実質とを自動で二分化し，可能な限り肝実質のみをROIに設定した．その後，画像解析ソフトを用いて，それらのROIの特徴値を抽出した．今回用いた特徴値は，空間濃度レベル依存法（エネルギー，エントロピー，相関，局所一様性，慣性），濃度レベル差分法（コントラスト，角度別2次モーメント，エントロピー，平均，逆差分モーメント），濃度ヒストグラム法（平均濃度，分散，歪度，尖度）の3つのテクスチャ解析で得られる14個である．それらの特徴値と①Fibroscanの測定値，②皮下組織の厚さ，③血小板値および④新犬山分類の間に相関があるかを検討した．統計にはSpearmanの順位相関とJonckheere-Terpstra検定を用いた．
【結果】
これまでの検討では，恣意的に血管やアーチファクトを含まないようにROIの選択を行っていたが，分割併合法を用いることで，それらを除いた肝実質のみの領域を自動で選択することが可能であった．①Fibroscanの測定値と，空間濃度レベル依存法の相関との間に一定の傾向（ρ= 0.257，P = 0.084）を，濃度ヒストグラム法の歪度との間に相関（ρ= -0.382，P = 0.00884）を認め，②皮下厚と濃度ヒストグラム法の歪度（ρ= 0.465，P = 0.000762），尖度（ρ= -0.285，P = 0.0474）との間に相関を認めた．
【結語】
分割併合法によるROIの自動設定法を考案し，同時生起行列を用いたテクスチャ解析の手法で数量的な肝線維化の評価を試みた．