古市 好宏, 杉本 勝俊, 糸井 隆夫

Yoshihiro FURUICHI, Katsutoshi SUGIMOTO, Takao ITOI

東京医科大学消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【諸言】
慢性C型肝炎（HCV）に対するDirect Acting Antivirals（DAA）薬の登場により，高率にSVRが得られるようになった．治療成功後に肝硬度が低下する報告が散見されるが，脾硬度や門脈血流量（PV量）に与える影響については明らかになっていない．
【目的】
HCVに対するDAA治療後の肝硬度，脾硬度，PV量，Spleen Index（SI）の変化を前向きに明らかにする．
【対象と方法】
倫理委員会承認の後，本研究への同意が得られたHCV患者21例（1b：9例，2a：8例，2b：4例）を対象とした．超音波エラストグラフィー装置はAplio500を使用し，肝硬度，脾硬度，PV量，SI値および血液検査値を，治療前および治療終了3か月後（SVR12時）で前向きに比較検討した．尚，肝・脾硬度は5回計測し，SI値とPV量は3回計測し，その平均値を用いた．使用したDAA薬は1b：レジパスビル/ソホスブビル合剤，2a・2b：リバビリン＋ソホスブビルである．
【結果】
DAA治療成功率は100％で，全例でSVR12を達成した．肝硬度は12.5±6.9→9.7±5.8 kPa（p＜0.0001），脾硬度は27.5±13.7→20.8±8.9 kPa（p=0.027），SI値は16.5±6.2→15.1±5.1 cm2（p＝0.045）へ有意に改善（低下）した．PV量は516.8±190.0→670±168.5 mL/分（p＝0.0048）へ有意に上昇した．血液検査値では，血小板数が17.2±4.4→18.8±5.0万/μL（p＝0.0045）へ有意に上昇し，ASTは61.9±47.1→22.6±9.3 IU/L（p＝0.0011）へ低下し，ALTも81.0±105.8→16.4±8.3 IU/L（p＝0.012）へ有意に低下した．また，Albumin値が4.0±0.4→4.1±0.3 g/dL（p＝0.036）に有意に上昇した．
【考察】
DAA治療でSVRが得られたことによりAST，ALT，血小板数，Albumin値が有意に改善した．これら肝炎の鎮静化が肝内のうっ血と線維化を改善し，肝硬度低下と門脈血流量上昇をもたらしたと考えられた．また，治療によって脾臓内の免疫関連細胞数が低下し，脾臓内の細胞粘度が改善された結果，脾硬度とSI値の低下をもたらした可能性が考えられた．