Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 肝臓 肝線維化の評価法

(S248)

FibroScanの肝線維化診断・発癌予測の有用性 

Usefulness of FibroScan for evaluation of liver fibrosis and risk of hepatocellular carcinoma

是永 圭子, 澤部 祥子, 呉屋 薫, 伊藤 里美, 金沢 あずさ, 山口 秀樹, 今村 雅俊, 是永 匡紹, 溝上 雅史

Keiko KORENAGA, Syouko SAWABE, Kaoru TADANO, Satomi ITOU, Azusa KANAZAWA, Hideki YAMAGUCHI, Masatoshi IMAMURA, Masaaki KORENAGA, Masashi MIZOKAMI

1国立国際医療研究センター国府台病院消化器・肝臓内科, 2国立国際医療研究センター国府台病院中央検査部, 3国立国際医療研究センター国府台病院肝炎免疫研究センター

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kohnodai Hospital, National Center for Global Health and Medicine, 2Department of Clinical Laboratory, Kohnodai Hospital, National Center for Global Health and Medicine, 3The Research Center for Hepatitis and Immunology, Kohnodai Hospital, National Center for Global Health and Medicine

キーワード :

【目的】
超音波エラストグラフィーFibroScanで測定される肝硬度(LS)は,肝線維化診断のみならず肝発癌をも予測し得ることが報告されている.今回は,LSの線維化診断能と発癌予測能を血液マーカーEnhanced Liver fibrosis panel(ELF)・M2BPGi・FIB4と比較し,改めて検証した.
【方法】
検討1)C型慢性肝炎(CHC)104例の生検前日の血清よりELFスコア・M2BPGi・FIB4値を測定し,病理診断と比較した.ELFスコアは公式2.278+0.851ln(HA)+0.751ln(P3NP)+ln(TIMP)を用いて算出した.組織診断では新犬山分類を用い,内訳はStage1/Stage2/Stage3/Stage4=47/19/10/28例であった.検討2)CHCに対して,2013年8月から2015年1月までにDDAを導入した症例を前向きに観察し,各種マーカーと肝発癌との関連を検討した.治療開始時(BL)・治療終了時(EOT)・以後半年毎に各種マーカーを1年以上の経過で測定し得たのは74例で,いずれもSVRに至っている.
【成績】
1)LSと3種の血液マーカーいずれの値も線維化Stageが進展するに従って有意に上昇した.Stage3以上の高度線維化を識別するためのAUROCはLS:0.9021,ELF:0.8543,M2BPGi:0.8320,FIB4:0.8142だった.それに対応する最適cut off値は,LS:10.3kPa(Se84.2%,Sp80.3%),ELF:10.95(Se71.1%,Sp80.3%),M2BPGi:2.56COI(Se81.6%,Sp73.4%),FIB4:4.72(Se63.2%,Sp89.4%)だった.2)74例中3例に治療後1年以内に肝発癌を認め,最長2年迄の観察期間で発癌の増加はない.発癌3例とも,BLの4種マーカーは全て高度線維化のカットオフ値を超えていた.しかし,LS・ELFは3例とも全対象の上位10%に位置する高値に突出していたのに対し(LS20kPaかつELF11),M2BPGiに関しては3例中2例が上位33%の値にとどまり,FIB4は3例が上位22%以内に分布した.DDA治療後,発癌3例のLS・ELFは高値が持続したが(<LS>BL:平均27.8kPa,EOT:19.2kPa,SVR48週:21.2kPa)(<ELF>BL:平均11.8,EOT:10.5,SVR48:11.3),非発癌71例では治療後のマーカーはBLに比して有意に低下した(<LS>BL:平均9.3kPa,EOT:7.1kPa,SVR48:5.2kPa)(<ELF>BL:平均9.89,EOT:9.33,SVR48:9.32)(P<0.0001).M2BPGi・FIB4に関しては,発癌3例いずれも発癌時でも治療後はBLに比して有意に値が低下し,特にM2BPGiは高度線維化のカットオフ値以下に著減していた(BL:平均5.84COI,EOT:1.86COI,SVR48:1.61COI).
【考察】
LSの高度線維化診断能は他のマーカーと遜色なく良好である.SVR後短期間の発癌例では,治療前のLS・ELF高値で治療後もそのレベルが持続することが特徴として挙げられ,これらを満たす症例は注意が必要である.一方,M2BPGi単独で近未来の発癌を予測することは困難と考えられた.
【結論】
FibroScanで測定する肝硬度は,高度肝線維化診断・肝発癌予測に有用である.